ゲノム編集で目の病気治療 米で世界初の臨床試験へ
子供の失明原因「レーバー先天性黒内障10型」

【ワシントン=共同】遺伝子を効率的に改変できるゲノム編集技術を使い、子どもの失明の原因になる目の病気で遺伝子治療の臨床試験を米国で年内に始めると、米バイオテクノロジー企業が16日までに発表した。簡単に使えるため世界で急速に広がる「クリスパー・キャス9」という手法を活用して人の体内で原因遺伝子を直接修復する世界初の臨床試験という。
病気の治療はゲノム編集の応用で最も期待されている分野の一つ。成否は今後の遺伝子治療の広がりを占う試金石になる。
昨年発覚した中国の研究者による受精卵へのゲノム編集のように影響が将来世代に引き継がれる恐れはなく、遺伝子の改変は患者の患部に限定されると想定している。
臨床試験は、特定の遺伝子の変異が原因の「レーバー先天性黒内障10型」という病気を対象に米エディタスメディシンなどが計画。患者数は多くないが、子どもの頃に発症し、目の網膜の機能が正常に働かず、進行して失明することもある。
計画では、3歳以上の子どもと大人計18人に対し、網膜下にゲノム編集の薬剤を注射する。薬剤は細胞への運搬役となるウイルスベクターに、原因遺伝子の変異部分を正確に探し出すリボ核酸(RNA)と、変異部分を切り取って機能を正常化させるはさみ役の酵素を組み込んでいる。薬剤の濃度を変えるなどして、意図しない遺伝子の改変が起きないかなど安全性を評価するとともに有効性を調べる。
クリスパー法を巡っては、これまでに体外に取り出した血液などの細胞を遺伝子操作して体内に戻し、血液の病気やがんの治療を目指す臨床試験が既に米国などで実施されている。日本でも自治医大のチームが血友病の治療を目指すなど研究が進むが、人に臨床応用する段階に至っていない。
米国では、クリスパー法より古いゲノム編集の手法を使って、体内の遺伝子を直接操作する臨床試験も行われている。