2019年9月19日(木)

新興企業の経営に同窓、判断速く マッキンゼー人脈

2019/8/19 0:00
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日本のスタートアップ企業で米マッキンゼー・アンド・カンパニー出身者の存在感が高まっている要因に、起業家を輩出していることに加えて経営幹部が増えている事情がある。同社で働いた「卒業生」が、同期や後輩に参画を打診している。考え方が似ていて判断が速くなるという効果を期待してのことで、同社は新興勢への人材の供給源となっている。

同期、後輩のネットワーク

福岡県の北西に浮かぶ玄界島。ここでとれたサザエが1日、ドローン(小型無人機)で遠く離れた福岡市のバーベキュー場に届けられた。ドローンが決められた航路を自動で飛べるか調べる実験だ。飛行システムと機体を提供したのが自律制御システム研究所で、太田裕朗社長はマッキンゼーの出身だ。

「完全自動のドローンをビジネスに使ってもらいたい」と太田氏。2018年12月、ドローン専業として国内で初めて上場にこぎつけた。その裏に「卒業生」のつながりがあった。

「スタートアップを経営しないか」。太田氏はこう誘われ、16年に最高執行責任者(COO)として自律制御システム研究所に入社した。声をかけたのは、太田氏と10年入社で同期だった坂本教晃氏だ。

坂本氏はベンチャーキャピタル(VC)の東京大学エッジキャピタル(東京・文京)に在籍し、自律制御システム研究所に出資していた。同社を一層成長させるため、同期を頼った。

人脈はさらにつながり、太田氏は後輩を呼び寄せた。現在の鷲谷聡之COOと、早川研介最高財務責任者(CFO)だ。太田氏は「自分が率いていたコンサルチームの部下として一緒に働いていた。2人の力もあって上場できた」と話す。

副作用より効果

「卒業生」ではないスタートアップ経営者は「同窓だから頼れるという一方で、さまざまな判断に甘さが出てくるおそれがあるのでは」と話す。「例えば採用した人にやめてほしいと思ったとき、実行できるのか」

同窓の色が濃くなるにつれ、副作用を生むことはあるのかもしれない。会社を強くする多様な人材が集まりにくくなるのではないか、との指摘もある。

ただ、効果が副作用を上回る。「相手を知っているから素早く事業を進められる」。こう話しているのは金子和真氏だ。病院運営をIT(情報技術)で支えるリンクウェル(東京・港)を創業し、現在、最高経営責任者(CEO)を務める。11年入社の同期、山本遼祐氏を誘った。

「コンサルタントとして働くうち、似たような課題解決の考え方が身につく」と金子氏。同氏は医師でもあり、知識を生かし社外とのコミュニケーションを進める一方、山本氏はCOOとして管理部門や財務を担う。話す時間が短くても、判断がほぼ一致する。金子氏は「自分が2人いるかのよう」と話す。

プロジェクトごとにチームをつくり、実力がなければ声はかからない――。コンサル大手の厳しさの中で気心が知れていくということもある。

人脈は資金の出し手にも築かれている。加藤勇志郎社長が興したキャディ(東京・台東)は18年、米VCのDCMベンチャーズから約6億円調達した。VC側の担当者が、「卒業生」の原健一郎プリンシパルだった。

加藤氏がマッキンゼーにいるとき、原氏に1年以上にわたって事業のアイデアを相談し、助言を受けていた。このキャディのケースでは、詳しく事業内容を知ったうえで資金を出すというかたちで人脈が生きた。

イノベーションを生みだすには大企業とスタートアップの協業が重要だ。両者ではビジネスの進め方やスピードが違う。大企業の感覚もわかるコンサル出身者がスタートアップ経営陣やVCに増えれば、日本のイノベーションを加速させられる力になるかもしれない。

(山田遼太郎、佐藤史佳)

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