2019年9月16日(月)

エヌビディア、AI半導体の次へ緩めぬ顧客開拓

2019/8/16 13:03
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エヌビディアの2019年5~7月期の業績は停滞基調が続いた

エヌビディアの2019年5~7月期の業績は停滞基調が続いた

【シリコンバレー=佐藤浩実】米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の業績が停滞している。15日に発表した2019年5~7月期決算は前年同期比で17%減収、50%減益。過剰だった流通在庫の消化が進み改善はしているが、人工知能(AI)計算用の半導体が急拡大していた1年前までの勢いはない。不調が続くなか、精を出しているのが将来の顧客を育てる「布教活動」だ。

米ロサンゼルスで7月下旬に開かれたCG(コンピューターグラフィックス)の技術会議。米ピクサーなどアニメスタジオやゲーム制作会社の従業員と学生たちが集まる5日間のイベントで、エヌビディアは70近い講習会や討論会を開いた。米インテルや米アドビといった他のスポンサー企業と比べても講座の数は断トツで多い。

エヌビディアはCG関係者が集まる会議で「レイ・トレーシング(光線追跡)」の講習会を多数開いた(7月、米ロサンゼルス)

エヌビディアはCG関係者が集まる会議で「レイ・トレーシング(光線追跡)」の講習会を多数開いた(7月、米ロサンゼルス)

例えば1つの講座では、光の相互作用を再現して実写に近いCGを作る「リアルタイム・レイ・トレーシング(即時光線追跡)」と呼ぶ技術をエヌビディアの研究者が基本原理から説明していた。エヌビディアが18年に発売したGPU(画像処理半導体)で使えるようにした新技術で、15日の決算会見でもジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)が「映像表現を再発明するもの」と強調している。

エヌビディアの足元の業績はゲームやデータセンター向け半導体の需給調整の余波が続く。5~7月期の売上高は前年同期比17%減の25億7900万ドル(約2740億円)にとどまり、純利益は5億5200万ドルに半減。2~4月期と比べてそれぞれ16%増、40%増と復調の兆しもみえるが、新製品が目立って業績に貢献したわけではない。

むしろエヌビディアが狙うのは、AI半導体で成功した「時間をかけて熱心な利用者を育てる」というモデルを映画やアニメ、ゲームの根幹となるCGの技術でも再現することだ。

エヌビディアがAIの技術の一つである「深層学習(ディープラーニング)」を自社イベントの主題にしたのは15年。同社の半導体が世界中のデータセンターでAIの計算処理に使われるようになるより3年ほど早かった。地道に利用者を育ててきた成果が数年越しで実を結んだと言える。

19年5~7月期のデータセンター向け半導体の売上高は6億5500万ドルと前年同期比で14%減ったが、17年5~7月期(4億1600万ドル)と比べれば多い。「少数の大規模顧客(の投資調整)を除けば、AI計算の需要は順調に増えている」とファン氏は言う。

もちろん、エヌビディアが地道な活動に力を入れるのは警戒の表れでもある。これまでゲームや映像表現に使うGPUはエヌビディアの独壇場だったが、今夏に米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)が回路線幅7ナノ(ナノは10億分の1)メートルの生産技術を使った新製品を出したことで競争環境が変わりつつある。インテルもAMDからGPU部門の幹部を引き抜き、20年の参入をめざしている。

エヌビディアで制作会社向けの事業を統括するシニアダイレクターのサンディープ・グプテ氏は「レイ・トレーシングでは深層学習よりも早く成果を出せるはずだ」と話す。減収減益だった5~7月期決算にもかかわらず、今後の復調への期待から同社の株価は時間外取引で一時7%近く上昇した。市場の期待を現実にできるか。足元の顧客開拓の成果も結果を左右しそうだ。

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