アリババ「通販1強」さらに 4~6月営業利益3倍
【上海=松田直樹】中国のネット通販最大手、アリババ集団の業績が好調だ。15日発表した2019年4~6月期決算は営業利益が前年同期比3倍の243億元(約3600億円)だった。主力のネット通販事業はユーザー数を伸ばしてシェアを拡大し、テコ入れが進む動画配信サービスなどの赤字幅が縮小した。

売上高は42%増の1149億元、純利益は2.4倍の212億元だった。6月に実施した大規模ネット通販セール「6.18セール」で取引額を伸ばした。豊富な資金力で、販促などにライバルを寄せ付けない経営資源を投入している。6.18では採算を度外視した値下げが話題になり、業界2位の京東集団(JDドットコム)や3位の●(てへんに併のつくり)多多(ピンドゥオドゥオ)がやむなく追随する、という状況が相次いだ。

中国のネット通販は大都市で飽和状態になり、高成長に陰りがみえるが、アリババは確実にライバルのシェアを奪っている。利益のほぼ全てを稼ぎ出すネット通販事業は6月末の国内ユーザー数が6億7000万人に達し、1年前と比べて2割弱増えた。
中長期の成長を維持するため、アリババは多角化を急ぐ。現時点では費用が先行するが、収益化へ事業のテコ入れが進んでいるとみられる。
事業別の営業損益をみると、動画配信サービスなどのデジタルメディア・エンターテインメント事業は31億元の赤字(前年同期は42億元の赤字)、海外でも顧客網を広げつつあるクラウド事業は15億元の赤字(同20億元の赤字)に縮小した。
ネット通販に次ぐ成長事業と位置付けるネット出前サービス「餓了麼(ウーラマ)」や積極出店を続ける生鮮スーパー「盒馬(フーマー)鮮生」も引き続き投資が先行しているが、収支は改善に向かっているもようだ。
強引手法に不満 家電大手が反旗
「天猫(Tモール)側の対応に強い不満がある。我々に重大な損失を与えた」。広東省が本拠の電子レンジ世界最大手、格蘭仕(ギャランツ)は6月17日、驚きの声明を公表した。中国ネット業界の「巨人」に真っ向から反論するのは異例だ。
通常、アリババのTモールに出店するメーカーは良好な関係の構築に腐心する。販促方法や価格の設定など好条件を引き出さなければ「無数の商品の中で埋もれ、利用者の目に留まらない」(メーカー関係者)からだ。
ギャランツの声明によると、年間最大のネット通販セール「独身の日」に次ぐ規模の「6.18セール」を控えた4月、アリババが「業界3位の●(てへんに併のつくり)多多(ピンドゥオドゥオ)からの撤退」を求めてきたという。●(てへんに併のつくり)多多にはアリババのライバル、騰訊控股(テンセント)が出資している。
「アリババか●(てへんに併のつくり)多多かの二者択一」を迫られるもギャランツは拒否した。その後、6.18が佳境に入った6月17日、「Tモールでギャランツの商品を検索しても見つからない異常事態が発生した」との声明を出した。
6.18期間中のギャランツの取引額は、JDドットコムのサイトでは前年より増えたが、Tモールでは大きく減ったという。アリババは一連の経緯について「コメントは控える」としている。
こうした状況は当局も問題視する。国家市場監督管理総局は6月に公表した声明で「二者択一を迫る行為を摘発する」と強調した。ファーストリテイリング傘下のユニクロは2015年、JDドットコムのサイトに出店するもわずか3カ月で撤退した。ユニクロはTモールにも出店していたため「アリババの圧力では」とささやかれた。
「当時と状況は何も変わっていない」。業界関係者はあきらめ顔だ。ある大手日用品メーカーは7月、●(てへんに併のつくり)多多に出店する計画だったが、ギャランツの反乱を考慮して白紙に戻した。日系食品メーカーの関係者は「アリババに『どこよりも安い価格で販売してくれ』と言われれば逆らえない」と本音を打ち明ける。
ギャランツのように公然とアリババを批判するケースは初めてとみられる。その手法に不満を持つ企業からは「大きな一歩だ」との声もある。(上海=松田直樹)
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