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場立ち予想家は話術の達人 競馬ファンと運命共に

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2019/8/17 5:30
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東京・大井競馬場のパドック横にずらりと並ぶ百戦錬磨の場立ち予想家のブース。一番端に位置する「ゲートイン」と書かれた場所には、いつも人だかりができている。大井競馬のカリスマ予想家、吉冨隆安氏。特に「痛快かつ爽快、そしてユーモア」あふれる口上は、時代が平成から令和へ変わっても、多くのファンを魅了し続けている。今回は吉冨氏の「口上」に迫る。

場立ち予想家の吉冨さんのブースの前にはいつも人だかりができる

場立ち予想家の吉冨さんのブースの前にはいつも人だかりができる

「コツは何にもありません」

あれだけ人を引きつける口上には、きっと何かコツや秘訣があるに違いない、そう思ったのが今回、取材を思い立ったきっかけだった。さっそく口上について本人に伺ってみた。

すると、「予想理論」について聞かれると思っていた吉冨氏にとっては意外な質問だったようで、とても驚いた顔をされていた。そしてすぐさま「私は話し方についてこれまでレッスンを受けたこともないし、口上のコツなんてものも一切ありませんよ。むしろアナウンサーの方にアドバイスをいただきたいぐらいです」と笑いながら答えが返ってきた。

あれだけドラマチックな話し方をされるのだから、てっきり「話し方」についても勉強されてきたのだろうと考えていた私は、思わず拍子抜けしてしまった。加えてメインテーマになるはずの質問があっさり終わってしまい、どうしようか思案をめぐらせていた。そんな私に吉冨氏はこう語りかけた。

「場立ち予想をしているあの場は、かなり特殊な世界なんです。例えば30人聞いている人がいるとする。周りの人間からすれば、1人が30人に向かって演説をする、1対30という構図に見えるでしょう。しかし実際は、一人ひとりのファンと予想家がタッグを組んでいて、30組のペアができているようなものなんですよ。いうなれば場立ち予想家と聞いているファンは、テニスのダブルスのような関係で、その日の勝敗、その日の運命を共にしているのです」

「確かに周りからすれば、1人の男がおもしろおかしくあおって、予想を売っているように見えるかもしれない。しかし決して私はあおっているわけではなく、共に勝利をつかもうと"戦友"を励ましているだけなのです。そのように互いに鼓舞し合っているのがあの場所であり、だから特殊な世界なのです」

話す言葉の表現一つ一つ、そして言葉の力強さからは"吉冨節"の神髄を感じた。

辺境の地にできる人の群れ

吉冨氏は1989(平成元)年に大井競馬場の場立ち予想家として独立し、今日まで30年以上、壇に立ち続けてきた。今でこそ日本を代表する場立ち予想家だが、決して華々しくデビューしたわけではなかった。最初に与えられた場所は、4コーナーの端っこで、人はおろかハトすらも来ないようなところだったそうだ。向きもコースに対して反対向きだったため「みんなコースを見ているときにおれは平和島競艇場に向かってしゃべっていた」と、当時のことを今でも自虐の種にしている。

そうした場所だったため、とにかく集客には苦労した。30年前といえば、今日のようにネットがあるわけでもない。そのため「場立ち予想家」として名を上げるには、まず自分の話を聞いてくれる人たちを集めなくてはならないのだ。

そんな理由もあって、なんとか目立つように、なんとか人を集めるようにと工夫して、競馬とは関係がないネタも入れるようになったそうだ。それが今の口上につながっているかもしれない、というのが本人の分析。「辺境の地」で独立した吉冨氏は、「魅力あふれる口上」と確固たる軸馬1頭を決める「実走着差理論」によって多くのファンを獲得してきた。

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