2019年9月19日(木)

ドイツ失速、欧州経済に影 財政出動求める声も
4~6月GDP0.1%減 3四半期ぶりマイナス成長

貿易摩擦
2019/8/14 20:28
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【パリ=白石透冴】ドイツ連邦統計庁は14日、2019年4~6月の実質国内総生産(GDP、速報値)が前期比0.1%減ったと発表した。マイナス成長は3四半期ぶり。米中貿易戦争を受け製造業の生産・輸出が落ち込んだ。英国の欧州連合(EU)離脱、イタリアの政局不安も重なり、欧州経済は不透明感を強める。独政府は財政出動で景気を下支えすべきだとの声も高まっている。

独自動車輸出台数は4~6月、19%減少した(VWの独ドレスデン工場)=ロイター

同統計庁は「消費や投資が経済を支えるが、貿易が成長を鈍らせた」と説明した。9日発表の6月の貿易統計によると、輸出額は前年同月比8.0%減少した。製造業の強さを背景とする輸出立国なだけに、米中貿易戦争の悪影響を真っ先に受けた。英国の同期のGDPが0.2%減と6年半ぶりのマイナス成長に、フランスが0.2%増と市場予測を下回るなど欧州主要国経済は振るわない。

「造りすぎるよりは、造らないほうがいい」。自動車世界最大手、独フォルクスワーゲン(VW)のフランク・ウィッター最高財務責任者(CFO)は7月25日、決算電話会見でこぼした。稼ぎどころの中国新車市場などの冷え込みで、同社の1~6月の国内生産台数は前年同期に比べ15%減った。ドイツ自動車工業会によると、独国内の4~6月の輸出台数は前年同期比19%減少した。

自動車を支える独部品・素材業界にも悪影響は広がる。欧州化学最大手の独BASFは21年末までに世界で約6千人を削減することを決定。マルティン・ブルーダーミュラー社長は自動車業界について「19年中の回復は見込めない」と語った。鉄鋼世界最大手の欧州アルセロール・ミタルも5月、ポーランドなどに続き独仏の製鉄所でも減産に入ることを決めた。

先行きも厳しい。欧州経済研究センターが13日発表した8月の独景気予測指数は11年12月以来の低水準となった。各種指標は軒並み独経済の減速を示し、欧州委員会もドイツの19年の実質成長率を18年比0.9ポイント低い0.5%と予想する。

ドイツの内需は比較的堅調なだけに、経済減速の主因は米中貿易戦争に伴う世界の貿易の伸びが鈍化したことだ。ドイツは製造業を柱にGDPの47%を輸出に依存し、フランスの31%、日本の18%より高い。独製品への人気を武器に輸出を増やし、欧州で一人勝ちともいわれてきた。

だが米中対立で貿易が細り、中国景気が減速したのを受け、外需依存度の高い独経済の下振れが鮮明になった。ドイツはEU域内GDPの2割超を占めるだけに欧州全体への影響が懸念される。

秋にかけ、欧州は不確定要素をいくつも抱える。10月には、英国がEUからの「合意なき離脱」に踏み切る可能性がある。イタリアの連立与党も崩壊の瀬戸際にある。政治の不透明感と独経済との負の相乗作用で、減速する欧州景気がさらに後退する恐れもある。

こうした中、独政府は財政出動で景気を下支えすべきだとの意見が欧州中央銀行(ECB)などで出ている。ECBは9月にも利下げや量的緩和政策の再開を視野に追加緩和に踏み切るとみられるが、効果は限定的との見方も強い。政策金利を下げすぎれば、銀行の収益悪化などを通じ副作用が膨らむ懸念もある。

ドイツは財政黒字が続き、GDP比の公的債務は約60%。他の欧州諸国より低く、財政拡大の余地が大きい。独政府は9月20日に二酸化炭素(CO2)削減に向けた政策をまとめる予定だ。21年の任期満了で辞任するメルケル独首相の引退後を巡る駆け引きが続く連立与党だが、比較的足並みをそろえやすい気候変動対応を名目に、財政出動に踏み切るのではないかという観測がある。

ただ、戦前のハイパーインフレの経験から財政の健全性を重視してきたドイツでは、野放図な財政赤字拡大につながりかねないとの警戒も強い。憲法は均衡財政を原則として義務付けており、制約がある中でどう景気を下支えするかが焦点になる。

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