2019年8月20日(火)

リビア内戦 中東有力国の代理戦争に

中東・アフリカ
2019/8/14 19:47
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【カイロ=飛田雅則】産油国リビアで東西勢力の内戦が泥沼となっている。東側の武装組織が支配するベンガジで10日、自動車テロが発生し国連職員3人が死亡した。国連安保理は同日の緊急会合で攻撃を非難した。国連が西側の首都トリポリを拠点とする暫定政権を支援しているため武装組織の関与が疑われている。トルコなどは暫定政権を、サウジアラビアなどは武装組織を支援し「代理戦争」となっていることも混乱に拍車をかけている。

リビア東部のベンガジを拠点とする武装勢力「リビア国民軍」のメンバーら=ロイター

ベンガジの爆破事件は東側を支配するハフタル司令官が率いる武装組織「リビア国民軍」が10日に西側のシラージュ暫定政権との間の停戦を受け入れた後に発生した。犯行声明は出ていない。停戦は国連が11日からのイスラム教の祝日「犠牲祭」に合わせて提案。ハフタル氏側は11日にもトリポリ近郊の空港を攻撃したとされる。暫定政権もこれに応戦し、戦闘拡大の懸念がある。

4月にハフタル氏がトリポリ奪取を指示して以降、世界保健機関(WHO)によると戦闘で1千人以上が死亡した。国内勢力の主導権争いに加え、関係国がハフタル氏側と暫定政権側をそれぞれ支援していることも戦闘激化を助長している。

ハフタル氏はイスラム原理主義勢力と距離を置いた旧カダフィ独裁政権の軍高官で、イスラム過激派の排除を掲げる。同じく過激派に悩むサウジやエジプト、アラブ首長国連邦(UAE)が支援している。一方、国連が支援してきたシラージュ暫定政権はイスラム勢力と近い。サウジと対立するカタールやトルコなどが後ろ盾となってきた。

欧州の足並みもそろっていない。フランスは東部の油田地帯に権益を持つことからハフタル氏に肩入れする。一方、旧宗主国イタリアも油田の利権を持ち、暫定政権を支援する。両国の介入も内戦を複雑にしている。

ロイター通信は6月下旬、暫定政権がハフタル氏側の拠点で米国製対戦車ミサイルやUAEの国名が記された中国製レーザー誘導弾を発見したと報じた。仏国防相は7月上旬、このミサイルについて「現地の仏軍を守るため購入した」と認めたが、行方不明になっていたと説明しハフタル氏への提供を否定。2011年に国連で対リビア武器禁輸が採択されたが、関係国による武器提供が疑われている。

リビアは11年に本格化した民主化運動「アラブの春」でカダフィ政権が崩壊後、新政府が成立したが、14年に東西に分裂。国連主導で15年に統一政府が設立され、シラージュ氏が暫定首相に就任したが、ハフタル氏がこの政府を拒否。国連などが仲介をしてきたが、対立は続く。

リビアは石油輸出国機構(OPEC)に加盟する産油国だ。英石油大手BPによると産油量は18年が日量101万バレルで世界全体の1%ほど。内戦で油田施設が襲撃され、カダフィ政権崩壊前の10年と比べ4割強も減った。政情不安によるリビアの供給減少は米中の貿易摩擦などによる世界経済の減速にもかかわらず、原油価格を下支えする要因の1つでもある。

リビアは欧州を目指すアフリカからの移民や難民の地中海を渡る際の「玄関口」の1つだ。リビア情勢の不安定化が続けば、難民問題を再燃させる恐れもある。

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