エア・ウォーター、印産業ガス事業買収 200億円で

産業ガス大手のエア・ウォーターは14日、同業で世界首位の独リンデからインド事業の一部を約200億円で買収すると発表した。年内に製鉄所向けに酸素を供給する設備などを取得する。インドでは7月にも米社から同様の事業を取得しており、産業ガス市場が拡大している同国を軸に海外展開を加速する。
今回買収するのは独社のインド南部のカルナータカ州などの事業。産業ガスの大口ユーザーでインドの製鉄大手、JSWスチールの製鉄所の敷地内にあるガス製造プラント1基のほか、小口取引向けのガスの充填所2カ所を取得する。買収する事業の売上高は18年12月期で約60億円。
製鉄所は高炉で鉄を作る際に酸素を使って燃焼温度を高める。インドの粗鋼生産の拡大に伴い、産業ガスの需要が見込める。インド南部は自動車産業も多く、充填所からのガスの販売拡大も見込めるとしている。
エア・ウォーターは2013年に同業の現地企業を買収してインド市場に参入した。主に東部で金属加工業者向けに産業ガスを供給する事業を手がけてきた。この7月には米プラクスエアから東部の製鉄所向けなどの一部事業も買収した。今回の買収で同国南部にも営業地域を広げることで製鉄のほか、自動車産業向けの需要を取り込む。
独リンデは19年春に米大手のプラクスエアと経営統合した。インドの独禁当局はインド事業の合併の条件に一部事業の切り離しを要求していた。
エア・ウォーターは国内の産業ガス市場で大陽日酸に次ぐ2位。これまでは医療や農業・食品事業などへの多角化により成長してきたが、今後はガス事業の海外展開を新たな成長の柱にする考えだ。海外売上高比率を22年3月期までに10%と19年同期より5ポイント高める目標だ。