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「みかんで乾杯」 ゆるくて濃い今どき大学生の愛好会

NIKKEI STYLE

「#○○さんとつながりたい」

SNS(交流サイト)をチェックしていると、こうしたハッシュタグをよく見かけます。マニアックな分野であっても、好きなものが共通すれば手軽に同志とつながれる時代。逆にリアルでつながるほうがハードルが高いという声はよく聞きます。

こんな時代に、大学生はどのように自分の「場」を見つけているのでしょうか。

都内の大学に通う1年生の女子学生の例をご紹介します。入学してすぐに大学のダンス部に入り、日々忙しそうにしています。ところが「地方出身だし、部活以外にも人脈を広げたい」と思い立った彼女。早速、サークル探しも始めました。

恋愛の相手や知り合いを増やすのが目的ではなく、好きなものをとことん語れる同士がほしいというのが彼女の動機。聞けば、「土佐文旦が、大大大好き!」と言うのです。土佐文旦は高知の特産品のかんきつ類。土佐文旦を熱く語れる場など、あるのでしょうか。

「正直、土佐文旦が好きなことって人に言うほどのことではないし、何らすごいことでもない。関心のない人にはみかんって話題としてビミョーだし、土佐文旦の話をものすごい熱量で友達にしたらドン引きされるかもしれない。でも、もしもドン引きしないで、何なら同じかそれ以上の熱量でみかんの話ができて盛り上がれる人がいるとしたら、それってかなりうれしいじゃないですか」

そんな彼女はある日「みかん愛好会」のSNSを発見し大興奮。みかんの食べ比べなどが行われるという新歓の内容が楽しそうで、早速申し込んでみたものの人気のあまり落選するほどだったといいます。

東大「みかん愛好会」の飲み会 みかんジュースで乾杯

そんな大人気の「みかん愛好会」は東京大学にありました。ツイッターのフォロワー数は1万人を超えています。みかん愛好会共同代表の上杉莉子さんに直接問い合わせてみました。

6月に入会した6期生を含めて、現在のメンバーは200人以上。男女比は半々。未成年もいるため団体として飲み会は開かず、みかんジュースを飲み比べる「み乾杯」を実施するそうです。

サークルは飲み会が多いというイメージからは一線を画し、みかんへの情熱を感じました。200人超えの部活的なスケール感と、愛好会・同好会の魅力であるユルさが絶妙にミックスされています。

今年6年目というみかん愛好会の目標は、みかんの消費量を増やすこと。「なぜ大学生がみかん?」というツッコミを入れたくもなりますが、実際に農家に出向くなど活動は真剣そのもの。食べくらべや飲みくらべにとどまらず、みかんにまつわる知識発信にも力を入れています。「みかんを語らう会」というみかんを食べながら夜通し語り合う会や、みかんスイーツやみかん酒を楽しむ会まであるそうです。

「カレー同好会」はラッシーで乾杯 スパイス求めて海外旅も

SNSでの発信が少ない小規模の愛好会や同好会へのアクセスは、友人の口コミからという例が多いようです。

みかん愛好会とは別の女子大生に聞いたカレー同好会の場合、新入生歓迎会はカレー屋に現地集合し、お酒は飲まずにラッシーで乾杯。自己紹介後は、男女先輩後輩関係なく、好きなカレー屋の味やメニューについて、ナン派かご飯派か等々、話はかなり盛り上がったそうです。

ただし、盛り上がったら2次会3次会へとなだれ込む従来型のサークルとは違い、カレーを食べ終えるとサクッと解散するライトな新歓だったといいます。また、スパイス好きのメンバーが、夏休みにスパイスを求めてインドに行く企画を立て、「同行者求む」とLINEでゆるく呼びかけたところ2~3人から反応が。たとえ個人的に特段親しくなくても、同じカレー好きという共通点さえあれば海外にも行ってしまうフットワークの軽さがあります。

基本的に飲み会はなし。参加の強制もなし。集まるときは目的地に現地集合、現地解散が普通といったゆるさが、最近の同好会や愛好会の大きな特徴のように思えます。ただゆるいだけではなく、楽しみは濃く。自分の趣味がニッチだからといって諦めることなかれ。「これって自分だけ?」と思うようなものも、もしかしたら学生同士で共有できる場があるかもしれませんよ。

中村泰子(なかむら・やすこ)
ブームプランニング社長。山口県出身。1986年に企画集団「スキャットクラブ・オブ・ジャパン」を発足、女子高生ビジネスを立ち上げる。88年、株式会社ブームプランニングを設立し、女子高生を中心としたマーケティングやセールスプロモーションを展開。現在、未就学児から小・中・高生、大学生、OL、主婦、シニア層まで全国1万人以上ネットワークを広げ、様々な業種で企業の商品開発にかかわる。活動に関係した女子高生は10万人。著書に『「ウチら」と「オソロ」の世代 東京・女子高生の素顔と行動』など。

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