2019年9月18日(水)

延暦寺に鬼太郎参上 漫画キャラと日本画融合
匠と巧

関西タイムライン
コラム(地域)
2019/8/19 7:01
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着物会社、豊和堂(京都市)の山田晋也代表(44)は画家としての顔も持つ。その作風はちょっと変わっている。「ゲゲゲの鬼太郎」などの現代的な漫画キャラクターと伝統的な日本画を一幅の絵に収める。そのユニークな画風が評価され、10月には比叡山延暦寺の大書院での作品の公開が決まった。大書院に現代絵画が並ぶのは初めてという。

比叡山の七不思議の一つ、「一文字たぬき」と「鬼太郎」((C)水木プロダクション)が作品に同居する=淡嶋健人撮影

比叡山の七不思議の一つ、「一文字たぬき」と「鬼太郎」((C)水木プロダクション)が作品に同居する=淡嶋健人撮影

京都市のアトリエ。真剣な表情で筆を執る山田さんの目の前に1匹の大たぬきがいる。その横にたたずむのは鬼太郎。「時代ごとに違う『怖さ』を融合させて一つの作品にしたい」(山田さん)と取り組むのは、日本画の中に漫画やアニメーションキャラクターを描き加える作品だ。

これまで手掛けた作品では、ボーカロイドの「初音ミク」や、手塚治虫氏の「鉄腕アトム」「ブラックジャック」なども登場する。色使いなど過去の作品を丁寧に再現しながら、キャラクターがピタリとはまる構図を重視。日本画の良さを損なわずに、現代キャラクターが寄り添う組み合わせの妙が見る者を驚かせる。「過去の作品へのオマージュ」(山田さん)としての緻密な再現と、自らの創造性のどちらも必要という。

2021年に天台宗を開いた最澄の没後1200年目を迎えるのに合わせ、比叡山延暦寺は通常は非公開の大書院を公開する。ここに山田さんの作品が10月から12月まで並ぶ。

いまは「一文字たぬき」という大たぬきなど比叡山に昔から伝わる七不思議の場面を使った作品を制作中。まず妖怪画の画集などを参考に鉛筆で下絵を描く。妖怪の表情や骨格などに気を配りながら描写し、その上から作品用の和紙や「絹本(けんぽん)」という絹地に筆を使って描く。絹本では白色などで7~8回ほど上塗りし、グラデーションを付ける。

山田さんは幼い頃から自宅に並ぶ漫画に囲まれて過ごし、20歳代半ばにはラップを始めた。07年に米国に武者修行に行くほどのめり込んだが、転機は帰国後に偶然行った細見美術館(京都市)で訪れた。肌で感じた米国の空気とのギャップもあり「日本画を新鮮に感じた」。同美術館に頼み込み作品の模写や復元に携わりながら技術力を磨いた。ラッパーを志したことからも分かるように夢は「表現者」。日本画に漫画を組み合わせ「新しい面白さを出したい」と思うのは自然な流れだった。

作品が脚光を浴びたのは15年に京都国際マンガミュージアムで開いた「琳派オマージュ展」。公開当初は批判もあったが「実際に見てもらい、評価されるようになった」と共同で作品を手掛ける絵師の平尾勉さん(67)は振り返る。

「日本の漫画の始まりは鳥獣人物戯画。歴史は長い」(山田さん)。江戸時代には葛飾北斎の「北斎漫画」があったように漫画は日本古来のコンテンツだ。大書院で躍動する鬼太郎が人々の心を捉えれば、世界に誇る漫画文化がまたひとつ進化するかもしれない。

(杜師康佑)

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