日航機墜落34年、遺族ら御巣鷹に慰霊登山
社長、飲酒不祥事を陳謝

乗客乗員520人が犠牲になった日航ジャンボ機墜落事故から34年を迎えた12日、早朝から遺族らが墜落現場となった御巣鷹の尾根(群馬県上野村)に慰霊登山し、犠牲者を悼んだ。尾根に到着した遺族らは墜落地点に建てられた「昇魂之碑」の前で黙とう。日航を含めた国内航空会社では昨年来、飲酒の不祥事が相次ぎ、関係者は安全確保の誓いを新たにした。

日航によると、今年は昨年とほぼ同数の80家族276人が登った。同日夕には麓の追悼施設「慰霊の園」で式典が開かれ山本一太知事や上野村の黒沢八郎村長らがあいさつした。墜落時刻の午後6時56分には犠牲者と同じ数の520本のろうそくに火をともし、遺族らが黙とうをささげた。
同社の赤坂祐二社長も慰霊登山し、同日午後1時半ごろ、昇魂之碑に献花した。パイロットの飲酒不祥事を巡り「(犠牲者や遺族に)申し訳ないとの一心で登った。事故の教訓を忘れたと言われるのではないか」と陳謝。「安全への取り組みに終わりはない。常に危機意識を持って取り組んでいく」と誓った。
この日の午前6時ごろには木漏れ日が山中を照らす中、花を抱えた遺族らが登り始めた。約800メートルの登山道では息を切らしながらも、つえや手すりを頼りに尾根を目指す高齢遺族の姿も目立った。1時間ほどかけて山道を歩き、尾根に着いた遺族らは黙とうし、「安全の鐘」をならして空の安全を祈願した。
高齢化により足が遠ざかる遺族もおり、今年4月には登山者が休憩するための切り株状のベンチが約30個設置された。
妹の泉谷淳子さん(当時20)を亡くした大阪市の弁理士、透さん(60)は父の明造さん(85)と母の朝子さん(80)と昇魂之碑を巡った後、遺体が見つかった場所に建てられた墓標に参拝。「強くて賢い女性で、生きていれば今の時代に活躍しただろう」と惜しんだ。
淳子さんは東京都のホテルに就職し1年目の年の勤務終了後、実家に帰省するため搭乗、事故に遭った。透さんは「亡くなった妹の分までしっかり生きていると報告できた」と話した。
父の山本謙二さん(当時49)が犠牲になった東京都中央区の会社員、昌由さん(39)は家族などの近況を報告。「長女が生まれ自分が父になった。家族や子育てについて相談したかった」と悲しんだ。同じ米ボーイングの航空機で墜落事故が相次いだことにも触れ、「ボーイングに事故の教訓は伝わっているのだろうか」と憤った。
事故機は出張の会社員やお盆の帰省客らでほぼ満席で、死者数は単独の航空機事故としては現在でも世界最悪。しかし、国内航空会社では昨年来、日航を含む各社のパイロットが乗務前の呼気検査でアルコールを検出する不祥事が続発。アルコール検査の義務化など国土交通省による規制強化につながった。
