2019年9月23日(月)

JDI、綱渡りの支援合意 中国勢から800億円

2019/8/9 23:00
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経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は9日、7日付で契約した中国の投資会社などによる800億円の金融支援について記者会見を開いた。筆頭株主で官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)の譲歩を伴うギリギリの支援合意で、ひとまず経営破綻の懸念は遠のいた。ただ本業は苦戦が続き、資金繰りの懸念を完全に払拭できたわけではない。再建を担う布陣が一枚岩なのかどうか不安も残る。

決算発表するジャパンディスプレイの菊岡稔次期社長(9日、東京都港区)

決算発表するジャパンディスプレイの菊岡稔次期社長(9日、東京都港区)

「支援の実現性は」「遅れる可能性はないか」――。9日の会見では中国の嘉実基金管理グループや香港ファンドのオアシス・マネジメントの支援が確実に実行されるかを問う声が相次いだ。JDIの次期社長、菊岡稔常務執行役員は「払い込みが大幅にずれ込むとは思わない」と反論した。

本来なら同席するはずだった嘉実基金の交渉担当者、ウィンストン・リー氏は急きょ欠席した。JDIによると「健康上の理由」という。リー氏は「JDIが高い収益性と財務の自立を確保すると確信している」と声明を出した。ただ実際に投資判断を担うのはリー氏ではなく、嘉実基金のトップとみられる。「(リー氏の声明だけでは)今後の支援体制に不安も残る」(関係者)

スマートフォン用液晶パネルの需要を読み違えて過剰投資に走り、業績や資金繰りが悪化したJDIの支援交渉は混乱が続いた。4月に台湾・中国の3社連合と合意したが、台湾2社が6月に離脱。JDIはスポンサー候補として残った嘉実基金や新たに名乗りをあげた香港のオアシスと交渉を続けた。ようやく7月12日、嘉実基金のリー氏から800億円の支援にメドがたったとの通知を受けたと発表した。

ただ7月の時点では契約は結ばれておらず、800億円をどう工面するのかも完全には決まっていなかったため、JDIは嘉実基金などと詰めの交渉を急いだ。複雑な利害関係の調整に追われ、契約は遅れに遅れた。

JDIが交渉を急ぐ必要があったのは「8月中に資金が足りなくなるかもしれない」(関係者)との懸念があったためだ。6月末の現預金は436億円あるが3月末から253億円減少した。夏場はアップルの新型スマホの発売を控え、部材の調達などで数百億円の資金が必要になる可能性がある。中国勢などとの契約を前提としたINCJの融資がなければ、行き詰まる可能性もあった。

綱渡りの交渉が続くなかで浮上したのが、INCJによるJDIへの追加支援だ。複数の関係者によると、当初は中国勢の払い込みまでのつなぎ融資を想定していたが、嘉実基金が通常の融資への変更を求めた。INCJは急きょ7月末に最大400億円を融資する方針を決め、8月8日付で200億円を実行した。破綻を回避するには、やむを得ないとINCJも判断したようだ。

当面の運転資金を確保できたことで、JDIの破綻懸念はひとまず遠のいた。しかし、それでも予断を許さない状況は続く。調整が長引き、資金調達のスケジュールなどが変わったからだ。

JDIが支援受け入れを正式に決める臨時株主総会は、8月下旬の予定が9月27日に延期となった。JDIは800億円のうち、500億円は10月末までに受け取れる方向と説明し、残りは2019年度中を想定しているという。ただ100億円分の調達については、嘉実基金とまだ交渉中で出資の確約を得られておらず、オアシスも懸念しているようだ。

再建を担う布陣への不安もくすぶる。嘉実基金は交渉で支援に後ろ向きになった時期があったため、「払い込みが済むまでは安心できない」(JDI関係者)。払い込み後は中国勢が取締役9人のうち過半数を占める権利を持ち、JDIの再建計画や人事は練り直しを迫られる可能性がある。

資金を受け取れても再建はイバラの道だ。19年4~6月期決算はスマホ用液晶パネルの販売低迷が続き、赤字だった。アップルは20年以降、韓国サムスン電子などの有機ELパネルの採用を増やす方針とみられる。JDIは人員削減や工場の減損などで固定費を年500億円減らし、スマホ向け事業の分社化でリスクを抑える考えだが、立て直しは簡単ではない。

ある交渉関係者は「JDIが800億円を調達できたとしても、遅かれ早かれ新たな資金が不可欠になる」と話す。JDIは新たに中国パネルメーカーなどからの出資も模索するが、米中摩擦が激しさを増すなか、各国の独禁当局や対米外国投資委員会(CFIUS)の判断次第では、支援が暗礁に乗り上げるリスクもある。

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