親の親族の債務、認知後3カ月は相続放棄可 最高裁
伯父の債務を相続放棄しないまま父親が死亡した場合、その債務を引き継ぐことになった子どもはいつまでに相続放棄すれば返済を免れるのか。こうしたケースで、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は9日、子ども自身が債務の相続人になったことを知ってから3カ月以内に相続放棄すればよいとする初判断を示した。

民法は、相続財産を放棄できる期限を「自分のために相続が始まったことを知った時」から3カ月(熟慮期間)以内と定めている。訴訟では、親が熟慮期間中に相続放棄せずに死亡し、債務が子どもに引き継がれる「再転相続」と呼ばれるケースでの熟慮期間の起算点が争われていた。
原告は新潟県の女性。多額の債務を抱えていた伯父の死後、その子どもらが相続放棄したため、弟である女性の父親が相続人となった。父親は相続人になったことを知らないまま熟慮期間中の2012年10月に亡くなり、女性が伯父の債務を引き継ぐ形になった。
女性は伯父の家族と疎遠だったため、15年11月に強制執行の通知を受けて初めて再転相続人になっていたことを知り、16年2月に相続放棄した。女性は強制執行しないよう求めた訴訟で、熟慮期間の起算点を「通知が届いた日」と主張し、債権回収会社は「父親の死亡時」と訴えていた。
第2小法廷は判決で、「再転相続で相続人になったことを知らないまま熟慮期間が始まるとすると、相続を認めるか放棄するかを選ぶ機会を保障する民法の規定の趣旨に反する」と指摘。女性が再転相続人になったことを知った時点(通知が届いた日)を起算点にすべきだと結論づけた。
疎遠だった親族の債務を知らないうちに再転相続で背負うことによるトラブルは少なくないとみられる。これまでは親族の債務に関する子どもの認識にかかわらず、親の死亡を知った時点を熟慮期間の起算点とする法解釈が通説だった。
今回の最高裁判断により、身に覚えのない親族の債務の再転相続人になった場合に、相続放棄が認められる余地が広がる可能性がある。相続財産の処理や債権回収の実務に影響を与えそうだ。