FA関連8社、全社が最終減益 中国企業が投資抑制

SMC、ファナックなど工場自動化(FA)の機器を手がけるメーカーの業績が振るわない。SMCなど6社の2019年4~6月期の連結決算はそろって最終減益。ダイフクなど2社は20年3月期の業績予想を下方修正した。米中貿易摩擦で取引先の中国企業が設備投資を抑制しており、回復時期が見通しにくくなっている。
決算期が異なる安川電機の19年3~5月期、THKの同1~6月期の連結決算も最終減益だった。米中摩擦が激しさを増す中で、これまで世界の製造業の増産投資に支えられてきたFA関連の主要8社の業績は総崩れになっている。
空気圧機器の世界最大手、SMCが9日に発表した4~6月期の連結純利益は前年同期に比べて35%減の270億円にとどまった。同期間の最終減益は3年ぶりだ。
空気圧機器は半導体製造装置や工作機械を動かすための中核部品だが、4~6月期はとりわけ半導体向け機器の出荷が大幅に減少した。円高による為替差損57億円も収益を圧迫した。
産業用ロボットに組み込む精密減速機の大手、ハーモニック・ドライブ・システムズが9日発表した4~6月期の連結純利益は88%減の3億8200万円だった。
スマートフォン(スマホ)の世界市場が天井を打った影響などで取引先が在庫調整に入っており、4~6月期の受注高は前年同期に比べて52%減の76億円だった。
ファナックは米中摩擦の先行きを懸念して20年3月期の純利益の予想を前期比61%減の603億円に引き下げた。これは従来予想を20億円下回る水準で、山口賢治社長兼最高経営責任者(CEO)は「顧客の様子見感が強まったため」としている。
同社は売上高の5割近くが自動車関連とみられ、世界的な新車販売台数の落ち込みが響いているようだ。
物流機器大手のダイフクは、半導体や液晶パネルの製造工場のクリーンルーム内に設置する自動搬送機器が苦戦している。このため、20年3月期の純利益予想を15%減の335億円に下方修正した。最終減益は9年ぶりで、減益率は従来予想の3%より大きくなる。5300億円とみていた受注高も5100億円にとどまる見通しだ。
ここにきて米トランプ政権が対中制裁関税「第4弾」の発動を表明するなど米中摩擦は先鋭化しており、一部の企業は「下期にかけて受注が回復する」との楽観シナリオを見直しつつある。
第4弾はスマホなども対象に含まれるだけに、仮に発動されればFA関連の設備投資の冷え込みは避けられない。主要8社のうち唯一、今期の増益を見込んでいる三菱電機も4~6月期の純利益は10%減で、「需要の回復が遅れる可能性がある」(皮籠石斉常務執行役)と懸念する。
ファナックのロボット事業など一部に受注回復の兆しがあるものの、株式市場では「年後半も先進国を中心に厳しい受注環境が続く可能性がある」(モルガン・スタンレーMUFG証券の井原芳直氏)との見方が大勢を占めている。各社の7~9月の受注動向に注目が集まりそうだ。