高校野球

球児の夏 今年の決勝は「ノーモア・ワンサイド」
スポーツライター 浜田昭八

2019/8/11 5:30
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昨夏の高校野球甲子園大会の決勝戦で、大阪桐蔭(北大阪)は13-2で金足農(秋田)を下して優勝した。準決勝戦までの全5試合で完投した金足農のエース吉田輝星は消耗著しく、決勝戦では5イニングで12点を失ってマウンドを降りた。この好投手が万全のコンディションで登板したら、こんなワンサイドの展開にならなかっただろうと残念に思った。

エースの疲労、スコアにくっきり

好試合が期待される決勝戦だが、意外にワンサイドゲームが多い。最近の大会に限っても、昨夏のほかに2008年の大阪桐蔭17-0常葉菊川(静岡)、10年の興南(沖縄)13-1東海大相模(神奈川)、11年の日大三(西東京)11-0光星学院(青森)、17年の花咲徳栄(埼玉)14-4広陵(広島)があった。ワンサイドではないが、09年の中京大中京(愛知)10-9日本文理(新潟)、15年の東海大相模10-6仙台育英(宮城)という、投手陣の消耗を顕著に表した試合もあった。

今年のフレッシュオールスター戦の試合前、ポーズをとる(左から)ロッテ・藤原、日本ハム・吉田輝、中日・根尾、広島・小園。昨夏の甲子園をわかせ、プロに進んだ球児たちだ=共同

今年のフレッシュオールスター戦の試合前、ポーズをとる(左から)ロッテ・藤原、日本ハム・吉田輝、中日・根尾、広島・小園。昨夏の甲子園をわかせ、プロに進んだ球児たちだ=共同

投手の疲労がピークに近い状態で、いい投球ができるはずがない。エース級の投手は、甲子園出場を果たした時点で、すでに疲労をため込んでいる。金足農・吉田も、秋田大会で全5試合に完投して甲子園入りしている。近年の暑さは厳しく、甲子園での対戦相手の多くは地方大会とは段違いの攻撃力を備えている。そんな打線との決勝は必然的にワンサイドになってしまう。

これまでにも、評判の好投手が大会後半にボロボロに崩れるのを何度も見てきた。日本高校野球連盟もその状態を憂慮して、さまざまな手を打ってきた。1人のエースに頼らない、複数投手の擁立を勧めた。大会大詰めでの3連投を避けるため、準決勝前日に休養日を設けた。今大会からは決勝戦前日も休養日にして、投手の保護に配慮している。

だが、休養日の増加が根本的な解決になるという保証はない。投げ過ぎを避けるためには、エースと力量に大差のない投手を育て、「投手陣」を形成する必要がある。昨夏の大阪桐蔭は全6試合でエース柿木蓮が登板したが、完投は1回戦、準決勝、決勝の3試合。あとの3試合は1、4、4イニングの救援だった。2回戦と準々決勝では遊撃兼任の根尾昂、3回戦では左腕横川凱が先発した。柿木が決勝戦のマウンドに立ったときの金足農・吉田との消耗度の差は歴然としていた。

複数投手、公立校では困難

こんな投手起用は甲子園での戦い方を知り尽くした大阪桐蔭でないと、なかなかできるものではない。大会後の秋のプロ野球ドラフトで柿木は日本ハム5位、根尾は野手として中日1位、横川は巨人4位で指名されて入団した。ロッテが1位指名した外野手、藤原恭大を合わせて、これだけ優秀な選手をそろえるのがまずもって難しい。

さらに、大会での対戦相手の戦力を見極め、起用順を決めなければならない。それを誤ると、エースを温存して敗退という事態も起こりうる。そこで活躍したのが"スコアラー"たち。相手の戦力を徹底的に調べて、チームに的確な情報を届ける裏方さんだ。このグループは大阪大会でも活躍し、優勝の陰のヒーローとたたえられた。

過去にも1993年夏の育英(兵庫)のように、3投手の継投で優勝した例はある。このときはエースの調子が上がらず、2人の2年生投手を使ったのが当たった。だが、これは極めてまれなケースで、複数投手を目指しながら、どこも優秀な中学球児を集めることができずに苦労している。金足農のような公立校が共通して抱える問題だ。

この夏の岩手大会で、優勝候補の大船渡がエース佐々木朗希を決勝戦に登板させず、甲子園行きを逃した。「故障防止のため」という同校の国保陽平監督の采配に賛否両論が渦巻いた。故障につながる危険性が、どの程度だったかは当事者でないと分からない。主砲でもある佐々木を野手としても起用しなかった徹底ぶりから、選手の将来を守ったと信じるほかはない。

岩手大会の決勝戦を終え、行進する大船渡の佐々木朗希投手(奥右から2人目)ら。花巻東に敗れ甲子園大会出場はならなかった=共同

岩手大会の決勝戦を終え、行進する大船渡の佐々木朗希投手(奥右から2人目)ら。花巻東に敗れ甲子園大会出場はならなかった=共同

同監督は米独立リーグでプレーした経験がある。甲子園大会を巡る過度の熱狂ぶりを、外から眺めて思うところがあったとも推察できる。甲子園大会がすべてではないが、佐々木の速球と強打の強豪校との対戦を見たかったと言えば、いつかの大会のセレモニーでの役員の挨拶のように、甲子園へ苦労して駒を進めた花巻東に失礼になる。

甲子園大会の熱狂ぶりには海外メディアも注目し、若い投手の投げ過ぎを「クレイジー」と批判した。それに対応するまでもなく、投球回や投球数制限の論議は高校球界でずっと論議されている。松坂大輔のように、投げ過ぎとみられたが、たくましく生き残っている投手も多い。いずれにしても、増えた休養日を有効に生かした、ワンサイドでない決勝戦を今年は期待したい。

(敬称略)

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