箱根・強羅にリノベホテル 小田急が狙う一石三鳥

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南関東・静岡
2019/8/11 5:00
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小田急電鉄は神奈川県箱根町に新たなリゾートホテルを開業する。バブル期に企業の保養施設として建設された施設を買い取りホテルに改装したのが特徴で、グループ初の取り組みだ。拠点の強羅エリアに立地し、訪日客や若年層の取り込みにつなげる。大規模な観光開発競争「箱根山戦争」から半世紀以上がたつ箱根で、小田急が新たな市場創出をけん引できる好例となるか――。

既存の施設を改装して開く(神奈川県箱根町)

既存の施設を改装して開く(神奈川県箱根町)


小田急電鉄が11日開業する「箱根ゆとわ」。全72室で、収容人数235人。ホテル棟2棟(62室)や台所や食器などを備えた部屋が入るコンドミニアム棟(10室)の3棟を設けた。3日、小田急の星野晃司社長は関係者を集めた記念式典で「箱根の発展に寄与できれば」と期待感を示した。

小田急が寄せる期待の一つは、新たな客層の開拓だ。同ホテルはグループの箱根登山鉄道の強羅駅から徒歩数分の線路沿いにある。マイカーがなくてもアクセスしやすい立地を生かし、若年層や訪日客などの利用を見込む。

施設を運営する小田急リゾーツは箱根で3ホテルを運営するが、いずれも公共交通機関だけで訪れるのは難しい場所にある。新ホテルは「3ホテルで10~12%程度だった」という訪日客比率を高めることを目指す。部屋風呂などが付き、眺望のよいコンドミニアムを生かした富裕層の連泊客をいかに取り込めるかも焦点となりそうだ。

もう一つの狙いは、宿泊需要の押し上げだ。小田急の特急電車が乗り入れる箱根湯本駅周辺には、日帰り温泉や観光施設などが点在し若い観光客も多い。ただ、箱根町全体では2018年の観光客2126万人のうち宿泊客は21%の452万人あまりで、大半が日帰り客。夕方には店じまいする飲食店や土産物店などもあった。

宿泊者の交流スペースなどを充実させた(神奈川県箱根町)

宿泊者の交流スペースなどを充実させた(神奈川県箱根町)

そこで、箱根ゆとわは館内を楽しむスペースを多めにとった。食事も料金に含み、食事場所などに心配せず滞在できる施設とし、宿泊しながら小田急が「ゴールデンルート」と呼ぶ登山電車、ケーブルカー、遊覧船を楽しむ旅行を促す。

こうした取り組みに加え、保養施設の転用ノウハウを蓄積し、一帯に点在する企業や団体の施設の再生を旗振りする狙いもありそうだ。箱根ゆとわは以前、ゴッホの名画を落札した保険会社として知られる旧・安田火災海上保険(現・損保ジャパン日本興亜)の保養施設だった。ゆとりのある設計は、約30年を経ても「壊すのがもったいない」(小田急)建物だった。

箱根ゆとわでは狭い部屋を2室つなげ、新たに水道の配管を通してホテル向きの部屋に改修するなど「更地に建てるより難しかった」(小田急の星野社長)。企業の保養施設は全国の別荘地やリゾート地にあるが、利用が伸び悩んだり資産の効率化などで整理・売却される施設もある。そんな施設をうまく観光施設に転換する好例をつくり、一帯のにぎわいづくりを促せられれば、旅客収入や周辺の観光施設などの経済圏を広げられる可能性もある。

ゲストハウスなどに多い交流スペースや、追加料金が発生しづらいビジネスホテルに似た料金体系など、リゾートホテルでは異色の試みがどの程度受け入れられるか未知数のところもある。観光客のニーズをきめ細かくくみ取ってサービスの改善を続けつつ、歴史ある観光地に新たな風を吹き込めるかが、小田急に問われている。(牛山知也)

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