限界近づく原発処理水、結論先送りのツケ重く 福島第1
「22年夏にタンク満杯」試算

2019/8/8 18:02
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原発敷地内のタンクが増え続ければ、溶融燃料(デブリ)の取り出しなど廃炉の重要な作業に支障が出かねない(東京電力福島第1原発)

原発敷地内のタンクが増え続ければ、溶融燃料(デブリ)の取り出しなど廃炉の重要な作業に支障が出かねない(東京電力福島第1原発)

東京電力福島第1原子力発電所での処理水の保管が限界に近づいていることが公式に明らかになった。経済産業省の有識者会議はタンク増設による保管継続の可否を含めて処分方法の議論を続けるが、どの方法にするかという結論は先送りする方針だ。原発敷地内のタンクが増え続ければ、溶融燃料(デブリ)の取り出しなど廃炉の重要な作業に支障が出かねない。先送りのツケは重い。

【関連記事】福島第1原発の処理水タンク「22年夏に満杯」 東電試算

経産省は2013年から処理水の処分を巡る議論を始めた。薄めて海に放出することが、最も現実的な手段とみられている。処理水に含まれる放射性物質のトリチウムから出る放射線は弱く、国内外の原発ではトリチウムを含む水を海に流してきたためだ。

だが事故を起こした原発ではそう簡単にはいかない。十分な説明をして結論を出すのは東電と政府の役目だ。だが17年7月に東京電力ホールディングスの川村隆会長が「(海洋放出の)判断はもうしている」とインタビューで答えたと報じられ、地元の反発を招いた。説明責任を怠ったことで地元の懸念は根強く、結論の先送りが続く。

19年4月に世界貿易機関(WTO)が福島県などの水産物を輸入禁止する韓国の措置を容認したことも追い打ちをかけた。20年の東京五輪・パラリンピックを控え、国際的な風評被害の恐れもあり、処分の結論は当面先送りする見通しだ。

廃炉を支援する原子力損害賠償・廃炉等支援機構は8日、21年に2号機からデブリを取り出すことを盛り込んだ技術戦略プラン(要旨)を公表した。デブリは敷地内に保管する。こうした廃炉作業の本格化に向けた場所の確保が急務で、タンク増設のハードルは高い。

政府は廃炉・汚染水対策に約8兆円かかるとみる。だが処理水の処分ができず、タンクを作り続けたり、廃炉作業が滞ったりすれば膨らむ。

高い放射線を出すデブリの取り出しは廃炉作業の最も重要な工程とされる。東電はデブリや使用済み燃料の保管のために約8万平方メートルの土地が必要になるとの見通しを有識者会議に示す。

これ以外にもデブリの取り出し作業に必要な施設の建設が必要になる。今後、タンクの配置を効率化して土地の確保を図るが、すべての施設を建設するには不十分という。

仮に敷地外に保管するにしても大量の水の移送手段の確保、土地の所有者の許可、規制など課題は多い。タンクを追加で建設するにしても、海洋放出などの処分をするにしても準備には時間がかかる。残された猶予は少なく議論を急ぐ必要がある。

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