2019年9月16日(月)

米社会深まる分断、トランプ氏「助長」
銃規制、大統領選へ論戦再び

2019/8/8 19:00
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【ワシントン=中村亮】テキサス州などで起きた銃撃事件は米社会の分断が深まる実態を浮き彫りにした。トランプ米大統領が7日に訪れた銃撃現場の周辺では人種差別的な発言を連発する同氏への抗議集会が開かれ、野党の民主党からも事件の責任を問う声が相次いだ。民主党は2020年の大統領選に向けて銃規制の強化を訴え、強力なロビー団体、全米ライフル協会(NRA)を支持母体に抱えるトランプ氏に対抗する構えだ。

7日、「訪問を歓迎しない」と書かれた横断幕を掲げる人たち(米テキサス州エルパソ)=AP

トランプ氏は7日、メラニア夫人とともに銃撃事件の現場となった南部テキサス州エルパソと中西部オハイオ州デートンを訪れた。ホワイトハウスによると、デートンでは複数の病室を回って事件の被害者を見舞い、病院の看護師を激励した。トランプ氏はツイッターに被害者らと和やかなムードで撮影した写真や動画を投稿し「心温まるすばらしい訪問だった」とアピールした。

だが訪問先ではトランプ氏への抗議活動が目立った。エルパソでは「人種差別主義者のトランプ。歓迎しない」と書かれたTシャツを着た人々がトランプ氏を非難する集会を開いた。

集会には大統領選で民主党候補としての指名獲得を目指すオルーク前下院議員も駆けつけてトランプ氏や与党・共和党を非難。「暴力を見過ごし、寛容性を失ったことで生命が奪われた」と強調した。同じく民主党の大統領候補を目指すバイデン前副大統領もアイオワ州での演説で「トランプ氏が白人至上主義を助長している」と断じた。

トランプ氏の責任を問う声があがるのはヘイトクライム(憎悪犯罪)の疑いが強まったからだ。

米メディアによると、エルパソの事件ではインターネット上に投稿された容疑者のものとみられる声明文に「ヒスパニック(中南米系)の侵略」に懸念を示し、「人種の混合」に反対すると記されていた。

トランプ氏が頻繁に使い、不法移民流入の原因と指摘する「開かれた国境」という表現もあった。マイノリティーを軽視しがちなトランプ氏に呼応した犯行との見方が広がった。

捜査当局も白人至上主義などの過激思想を注視してきた。米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は7月末の議会公聴会で「憎悪犯罪を極めて深刻な問題ととらえている」と指摘。過激派組織「イスラム国」(IS)などの外国テロ組織に共鳴したテロだけでなく、米国内で広がる過激思想に染まった人物によるテロにも警戒を強めると表明していた。

FBIは5月時点で国内テロの可能性がある850件を捜査し、4割が人種差別的な動機があるケースだったと説明。大半の事例が白人至上主義に関連しているという。

トランプ氏は過激思想を同氏が助長しているという民主党の非難に真っ向から反発している。7日にはホワイトハウスで記者団に「私の発言は分断を招いていない。連帯を促している」と主張した。ツイッターではデートンの事件の容疑者が民主党の大統領候補のひとりのサンダース上院議員などの支持者だったとの報道に触れて「別のメディアも報じるべきだ」と強調。自らの責任を否定した。

銃撃事件を受け、20年の米大統領選に向けた銃規制の是非を巡る議論も活発になってきた。民主党の大統領候補の指名争いに参加しているハリス上院議員はツイッターで7日、大統領に就任すれば年間5丁以上の銃を販売する業者に対して購入者の経歴調査を義務づけると表明した。

インディアナ州サウスベンド市長を務めるブティジェッジ氏も危険人物から銃を取り上げる権限を裁判所に与える法律の制定を訴えた。同氏も民主党の大統領候補の指名獲得をめざしている。

トランプ氏も銃の購入者に対する経歴調査の強化を検討しているが、どれほど踏み込んだ対策になるかは見通せない。

全米ライフル協会は「事件の根源に対処しようとするトランプ氏を支持する」と強調する。銃撃事件は精神的な病を患った人物の犯行だとトランプ氏が指摘していることを念頭においたものだ。事件が銃規制の大幅な強化につながらないよう予防線を張っている。

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