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「京アニ作品の質 落とさない」 制作に没頭する社員

突然の火災、2階から飛び降り一命取り留める

事件現場近くに設置された献花台に供えられた応援メッセージやイラスト(7日午後、京都市伏見区)=共同

放火殺人事件で35人が死亡した京都アニメーションでは、今もスタッフが制作活動を続けている。事件は8日で発生から3週間。事件当日、現場となった京都市伏見区の第1スタジオから脱出した男性社員(52)は、腕に負った打撲が治らないうちから職場に復帰。喪失感を抱えながらも「クオリティーが落ちたと思われないように頑張ろう」と仕事に没頭している。

7月18日の事件当日、男性は第1スタジオ2階で背景画を描いていた。突然悲鳴が聞こえ、真っ黒な煙が充満。男性は決死の覚悟で2階のベランダから飛び降り、一命を取り留めた。

1980年代に京アニに入社。幼い頃、漫画家の松本零士さんの代表作「銀河鉄道999」などに夢中になり、絵を描くのが大好きになった。入社試験には風景やキャラクターを描き、数センチの厚みになったB4の紙の束を持参。「絵をなりわいに飯を食っていきたい」と宣言した。

納得いく絵が描けず締め切りが迫る中、仕事を辞めたいと思ったことは何度もある。「才能の弾切れかな」。踏ん張れたのは「クリエーター重視」の職場環境と尊敬する仲間たちのおかげだ。

犠牲になった同僚たちは自宅に遊びに来るなど、プライベートでも付き合いがあった。取締役でベテランアニメーターの木上益治さん(61)もその一人。「ほぼ下書きなしで一筆書きで描く。『爆速』で上手。到底かなわない」と男性。若手たちはのみ込みが早く「仲間であり家族であり、切磋琢磨(せっさたくま)するライバルだった」と話す。

コミュニケーションの多さは、業界で「京アニクオリティー」と称される同社の繊細な絵や高い表現力を支えてきた。「トップダウンではなく、なんでもみんなで話し合った」と男性は話す。

かけがえのない仲間を失いながらも、現場は年末公開予定の映画制作を進めている。「自分は仕事をしている方が気持ちが楽。以前と変わらず作品をつくり続けることが、犯人に対する最大級の反撃になれば」。男性は言葉に力を込めた。〔共同〕

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