2019年9月18日(水)

ディズニー攻勢 挑む動画配信の壁

2019/8/7 11:40
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動画配信サービス参入への地固めをするディズニーだが、移ろいやすい消費者をつかみ続けられるかは課題だ(4月、サービスを発表する担当者)

動画配信サービス参入への地固めをするディズニーだが、移ろいやすい消費者をつかみ続けられるかは課題だ(4月、サービスを発表する担当者)

【シリコンバレー=佐藤浩実】米ウォルト・ディズニーが動画配信で首位の米ネットフリックスとの対峙に向けた地固めを急いでいる。6日の決算会見では映画や動画配信事業での買収や経営権取得の効果を強調。11月から複数の動画配信サービスをまとめ売りする計画も明らかにした。ただ、ネットフリックスの減速に市場の変化を読み取る向きもある。動画配信の先達がぶつかる壁をどう乗り越えるか。複合エンターテインメント企業の地力が試される。

ディズニーが6日に開示した2019年4~6月期の業績。売上高は前年同期比33%増の202億4500万ドル(約2兆1550億円)と大幅に増えた一方、純利益は40%減の17億6000万ドルと大幅減となった。この期に営業赤字だった21世紀フォックスの映画部門や、動画配信の「Hulu(フールー)」をディズニーの既存事業に統合・整理した影響が出た。

ただ、短期的には減益要因であっても、ディズニーの未来にとってフォックスとフールーの獲得は大きな意味を持つ。

1つは11月に満を持して始める動画配信サービス「ディズニー+(プラス)」の内容の充実だ。このサービスでは傘下のマーベルスタジオが手掛ける「アベンジャーズ」やルーカスフィルムの「スター・ウォーズ」と並び、フォックスが抱える「ナショナルジオグラフィック」のドキュメンタリー作品も目玉になる。

さらにディズニーのボブ・アイガー最高経営責任者(CEO)は会見で月12.99ドルを払えばディズニープラスとフールー、スポーツ番組配信の「ESPN+(プラス)」を全て視聴できる新プランをつくると明らかにした。3つのサービスをばらばらに契約するよりも約5ドル安く、ネットフリックスを強く意識しているのは明白だ。

もっとも市場では、そのネットフリックスの変調が関心を集めている。同社が7月に開示した19年6月末時点の有料会員数は3カ月前と比べて2%の増加にとどまり、お膝元の米国では6010万人と8年ぶりの減少に転じた。値上げがきっかけではあるが「米国の全世帯(18年に1億2759万世帯)の半分程度が成長の限界」との見方が強まった。

ディズニーの目標はいまのところ、ディズニープラス単独の会員数を24年9月までに世界で6千万~9千万人にする段階だが、いずれ同じ壁にぶつかる可能性がある。

それ以上に、ネットフリックスの変調は移ろいやすい消費者の姿を浮き彫りにした点が大きい。コンテンツを作るための投資の元手となる収入を確保しやすい継続課金型のサービスとはいえ、米マイクロソフトや米アドビが手掛ける業務ソフトと異なり、利用者がサービスを中断するハードルは低い。

決済システムを構築する米リカーリーの調査によれば、動画サービスの解約率は約10%。気に入った作品の有無で1カ月ごとに契約を見直す消費者が出てきている。

ディズニーはまとめ売りのほか年間契約者への割引プランも用意する計画だが「ネットフリックスよりも作品数は少なくファンの熱意に頼る面はある」とアイガー氏も認める。繰り返し見るといった目的で契約を続けてくれるかが焦点になる。

株式市場では今のところ「ネットフリックスとディズニーは『動画配信戦争』を勝ち残れる」(カナダRBCキャピタル・マーケッツのマーク・マハニー氏)との声が多い。07年からこの事業に取り組むネットフリックスには先行者のノウハウと世界で1億5千万人を超える会員基盤があり、ディズニーには確立したブランドがあるためだ。だが20年には米国で少なくとも5社が動画配信サービスに参戦。競争は未知の領域に入る。

ディズニーはかねて、動画配信だけでなく、映画や作品の世界観を表現するテーマパークの組み合わせによる相乗効果を重視するとしてきた。映画「アベンジャーズ/エンドゲーム」の製作を指揮したマーベルスタジオのビクトリア・アロンソ氏は「動画配信(の独自作品)により、映画だけでは見せきれなかった登場人物の物語を6~8時間かけて伝えられる」と話す。

6日の決算発表では米国で開業したディズニーランドのスター・ウォーズの新エリアや、映画の新作ラッシュに関する説明にも時間を割いた。ネットフリックスの後を追いながらも、同社のような「動画配信一本」ではない総合的な強みを生かせるかが、今後の成長のカギを握っている。

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