ルネサス新体制、試練の船出 4~6月赤字

2019/8/6 22:32
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半導体大手のルネサスエレクトロニクスの業績が低迷している。6日発表した2019年4~6月期の連結決算は半導体需要が減少し、本業のもうけを示す営業損益が赤字になった。前社長の任期途中の辞任で7月に急きょ登板した柴田英利社長は人員削減などで業績回復を急ぐが、過剰設備がなお業績の重荷になりそうだ。グローバルで競争が激化するなか、復活への道は険しい。

半導体需要の先行きはなお不透明だ(ルネサスエレクトロニクスの那珂工場)

「(米中摩擦の影響は)読み切れない」「(日韓の関係悪化も)頭が痛い」。呉文精・前社長が業績悪化の責任を取り、任期途中で辞任して約1カ月。柴田社長は決算の電話会議で、先行きが一段と不透明になっていることを示した。

4~6月期(国際会計基準)の決算は売上高が前年同期比5%減の1926億円、営業損益は25億円の赤字(前年同期は327億円の黒字)となった。赤字は2四半期連続と厳しい内容だった。

ルネサスは自動車などの頭脳を担うマイコンで世界首位。11年の東日本大震災では自動車業界が被災工場の再開を支援するなど製造業にとって欠かせない存在と言える。ただ震災や円高で経営危機に陥り、官民ファンドの支援で再建を進めた。一時は業績が上向いたが、半導体市況の悪化で業績が低迷している。

課題は多い。まず在庫だ。18年に中国景気などが減速するなか、他社に比べ生産調整が遅れ、在庫が増えた。19年4~6月に2週間ほど一部の工場を止めて在庫の増加抑止を優先したが、流通在庫の過剰を完全に解消するには至らなかった。

半導体は好況期にメーカーや商社が購買を急ぎ、二重発注などの「仮需」が発生しやすい。実需と仮需の見極めが重要だが、ルネサスは家電メーカーの半導体部門が統合したため、「独自で市場を見極めて需要の増減に対応することが得意ではない」(アナリスト)。

ルネサスは在庫を増やさないために8月も1週間程度、一部工場の生産を止める。新開崇平・最高財務責任者(CFO)は「想定通りに(在庫調整が)進んでいない」と話す。産業機器向けなどの在庫調整は年内いっぱいかかる見通しだ。

16~17年の好況期に投資を増やした影響で設備が過剰になっていることも問題だ。ルネサスは国内外に10以上の工場を抱える。柴田氏は「工場によって(設備が過剰かどうかの)濃淡はあるが、強い問題意識を持っている」と危機感を示す。ルネサスは人員削減効果で年数十億円のコストを減らすが、減価償却費は3年前から倍増している。業績回復が進まないと生産体制の見直しを迫られる可能性もある。

社内の研究開発体制の立て直しなども不可欠だ。ルネサスは呉前社長が計1兆円超で米半導体2社を買収し、拡大路線を進んできた。一方、ルネサス本体の研究開発は投資に見合った成果が出ておらず「遅れている案件もある」(幹部)。1日付で全社を管轄する最高技術責任者(CTO)職を新設し、車載部門のCTOだった吉岡真一氏が就任。技術開発をテコ入れする。

グローバルの競争は厳しさを増す。オランダのNXPセミコンダクターズなど海外勢も市況の悪化の影響を受けたが黒字は確保している。赤字はルネサスだけだ。

独インフィニオンテクノロジーズは6月、1兆円超で米サイプレスセミコンダクタを買収すると発表した。インフィニオンは車載半導体で世界2位だったが、買収でNXPセミコンダクターズを抜き首位になり、3位のルネサスを上回る。

ルネサスも17年に米インターシル、19年に米インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)を計1兆円超で買収した。買収価格が割高との指摘が市場で絶えず、相乗効果を出せるかが課題となっている。

柴田氏は、当初は19年前半としていた中期経営計画の公表が20年にずれ込む可能性があると明らかにした。市場には「IDT統合後の成長戦略を速やかに示すべきだ」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の宮本武郎氏)との声もある。業績回復と成長をどう両立させるのか。手探りが続く。(龍元秀明、増田咲紀)

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