毎勤統計で「賃金」乱立 実態つかみにくく

2019/8/6 20:00
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不正が発覚した毎月勤労統計で、賃金を示す数値が乱立している。厚生労働省が6日発表した6月の速報値では、不正を受けて調査手法を修正した前後の2種類の現金給与総額(名目賃金)を併記。増加率に0.3ポイントの差が発生し、実態がつかみにくいままだ。野党が求めてきた同じ事業所のみを比較した場合の実質賃金の公表についても結論は出ておらず、信頼回復の道のりは遠い。

2018年末に発覚した毎勤統計の不正調査では、本来は従業員500人以上の事業所は全て調べる決まりになっていたにもかかわらず、東京都では04年から3分の1程度しか調べていなかった。18年からは無断で統計上の復元加工を始めていたこともわかった。

これを受け、厚労省は6月分の毎勤統計から、500人以上の事業所を全数調査に切り替えた値を公表。現金給与総額は前年同月比0.4%増の45万1918円。消費者物価指数の影響などを考慮した実質賃金は0.5%のマイナスだった。

一方、参考値として公表した従来の調査手法による値はいずれも全数調査の値を下回った。現金給与総額は0.1%増の45万934円、実質賃金は0.7%のマイナスだ。

SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは毎勤統計について「サンプル入れ替えの影響もあり、少なくとも今後1年は賃金の基調を判断する指標として参考にならない」と語る。そのうえで、傾向を見るうえでは「共通事業所系列」という同じ事業所だけを比べたデータを重視することを勧める。

共通事業所で比較した場合の名目賃金は同1.1%増と23カ月連続で増加した。3種類の「名目賃金」のどの数字が最も実態を表しているのか、判断できない状況が続いている。

共通事業所同士の比較を巡っては、野党が実質賃金の公表を求めてきたが、まだ結論が出ていない状況だ。6日午後の検討会では取りまとめに向けた議論があったが、公表の有無に関する言及はなかった。

厚労省は統計改革チームを立ち上げ、毎勤統計を含む公的統計の信頼回復をめざしている。毎勤統計は労働者の賃金や労働時間を把握するのが目的で、政府の景気判断にも用いられている。さまざまな「賃金」が乱立する状況は、景気見通しへの不信にもつながりかねない。

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