2019年9月22日(日)

カシミールの自治権剥奪 印パ対立激化も

2019/8/5 23:48
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【ニューデリー=馬場燃】インドのモディ政権は5日、パキスタンと領有権を争う北部ジャム・カシミール州に自治権を認めている憲法の規定を削除する改正案を議会に出した。この州はイスラム教徒が多数を占めており、イスラム過激派も活動している。インドは実効支配を強める方針だが、パキスタンとの対立が激化するのは必至の情勢だ。

インドはカシミール地方での防衛を手厚くしている=AP

インドはカシミール地方での防衛を手厚くしている=AP

モディ首相の与党インド人民党(BJP)はヒンズー至上主義を掲げており、全国で唯一イスラム教徒が多い同州の自治権の剥奪を主張してきた。インド政府は5日の閣議で方針を決め、大統領令を即時発効した。憲法の改正が必要になり、今後議会で審議する方向だ。同州では公共の場での集会が禁止され、インターネット接続規制や夜間外出禁止令なども出された。

インド憲法の第370条項は、同州に特別な自治権を与えてきた。具体的には防衛、外交、財政、通信を除き、インド政府はあらゆる法律の適用に州政府の同意を得る必要があった。他州のインド人は同州の土地や資産を購入できず、国は財政の非常事態宣言を出すこともできなかった。このため同州の住民は市民権や財産の所有権、基本的権利に関して他のインドの地域と異なっていた。 自治権剥奪の背景には印パが領有権を争うカシミール紛争の再燃がある。

印パは1947年の独立以来、カシミール地方に互いが支配地を設けて争っている。ここ10日間で支配地の境界線にあたる場所で衝突が激しくなり、インド側の支配地内でパキスタン軍5人が死亡した。インド政府は4日に避難勧告を出し、住民や旅行者など約2万人を退避させた。5日には約8千の軍隊をカシミール地方に新たに派遣することを決めた。

印パは2月にも互いの実効支配線を越えて空爆しあった。インドのモディ首相はパキスタンへの強硬姿勢を支持につなげ、5月の総選挙で再選を果たした。その後もパキスタンとは距離を置いており、スリランカなど近隣諸国への積極外交の一方、パキスタンのカーン首相の対話の呼びかけは拒んできた。

今回の措置にパキスタン側は強く反発している。パキスタン外務省は「違法な措置に対抗するため、すべての可能な選択肢を視野にいれる」との声明を出した。

カーン氏は4日に「このままだと地域に重大な危機を招く危険がある。トランプ氏が申し出ているカシミール問題の仲裁を願うときだ」とツイートした。トランプ米大統領は7月末と8月上旬にカシミール問題に関して「仲裁役」になる考えを示したが、2国間の解決を主張するインドは反対している。カシミール問題は解決の糸口がみえず、紛争は一段と困難な状況に陥る可能性がある。

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