米中対立、市場を揺らす リスク回避姿勢強まる

2019/8/5 22:19 (2019/8/6 0:58更新)
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米中の経済対立と米連邦準備理事会(FRB)の金融政策運営が世界の金融市場を揺さぶっている。5日には中国の通貨・人民元が対ドルで約11年ぶりに1ドル=7元台に下落。円は8月に入って3円超の円高・ドル安となる一時1ドル=105円台まで急伸した。日経平均株価は366円下落し、米株式相場も大幅安で始まった。世界景気の減速懸念が増幅し、市場参加者はリスク回避姿勢を一気に強めている。

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中国の通貨・人民元の対ドル相場は5日、1ドル=7元台に下落した=ロイター

中国の通貨・人民元の対ドル相場は5日、1ドル=7元台に下落した=ロイター

5日の上海外国為替市場で人民元相場は対ドルで2008年5月以来の元安・ドル高水準となる1ドル=7元台をつけた。中国人民銀行(中央銀行)は同日朝、人民元取引の基準値を1ドル=6.9元台と18年12月以来の元安・ドル高水準に設定した。中国当局が米国との貿易摩擦の長期化をにらんで元安を容認したとの見方から元売り・ドル買いが活発になった。

人民銀は5日、足元の元相場について「合理的でバランスの取れた水準で安定している」としたうえで「短期的な投機の動きを取り締まる」との声明を公表した。元安の主因は米中貿易摩擦との見方も示した。

こうした動きの影響を受けたのが対ドルの円相場だ。7月31日のFRBによる利下げ後、1ドル=109円台まで下落していたが、トランプ米大統領がほぼすべての中国製品を対象とする対中制裁関税の第4弾の発動表明でFRBによる継続利下げ観測が浮上。すでに106円台まで急伸していたところに、人民元の7元割れが加わり、5日の東京市場で一気に105円台まで上昇した。

円相場は今年1月上旬に瞬間的に104円台前半まで上昇した局面があったが、これを除けば1年4カ月ぶりの高値をつけた。一部の市場参加者は海外株などを買う際に金利の低い円で資金を調達し、海外通貨買い・円売りを絡ませて投資してきた。現在は世界経済の減速懸念から、この取引を解消する過程で円買いが強まっている。

FRBの利下げが堅調な米景気を支えるための「予防的」なものにとどまらないとの見方が日米金利差の縮小観測につながり、円高・ドル安を招く構図だ。政府、日銀は5日、相場の急変を受けて緊急会合を開催。財務省の武内良樹財務官は会合後、記者団に「過度な為替変動は望ましくない。必要に応じて対応する」と述べ、急速な円高の動きをけん制した。

動揺は株式市場にも波及した。5日の日経平均株価は大幅に続落し、終値は366円(2%)安の2万0720円と6月4日以来、2カ月ぶりの安値水準を付けた。東京証券取引所第1部で今年の安値を付けた銘柄の数は500を超えた。これは今年2番目の高水準だ。前週2日からの2日間の下げ幅は合計800円を超えた。円相場が主要通貨に対して軒並み上昇したことで、日本企業の輸出採算が悪化するとの懸念が急速に広がった。

5日の米株式市場ではダウ工業株30種平均が一時、前週末に比べ600ドル超下げた。

アジアの株式市場も中国・上海総合指数が2%安と約5カ月ぶり、香港のハンセン指数が3%安と約7カ月ぶりの安値水準に沈んだ。韓国では総合株価指数(KOSPI)が3%安となった。台湾やインド、フィリピンなども軒並み下げた。

アジアでは通貨も対ドルで下落した。資本流出が進むとの懸念が高まったためで、韓国ウォンは一時、3年5カ月ぶりの安値をつけた。インドネシアルピアなども1カ月半ぶりの安値となった。

国内債券市場では5日、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りがマイナス0.2%まで低下し、16年7月以来ほぼ3年ぶりの低水準に沈んでおり、市場の異変が随所に出てきた。

米中両国の対立で市場が一段と不安定になれば、実体経済に深刻な影響を与えかねない情勢だ。

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