悩み簡単解決 振るだけで寄るアプローチ術(上)

──最近、一時よりも80台前半が出なくなったなと思ったら、アプローチがかなり悪くなっていると友人から指摘されました。自分では加齢とともに体が硬くなり、ショットが悪くなったと判断していたのですが、実はアプローチだったわけです。振り返ってみたら、ピンに寄っていない。それも年間を通してです。
吉本 アプローチでひどいミスがないために注視していなかったわけですね。しかし、ピンに寄らなければ、なかなかパーにはできない。90を切るのが精いっぱいだったでしょう。
──まさにその通りで、ショットが悪いと90台にもなります。
吉本 それでショットに目がいってしまうのですね。しかし、ショットがそこそこでもアプローチでしっかり寄せられれば、80台前半であがれるし、シングルハンディにもなれます。実際、シングルプレーヤーでアプローチの巧みな人はとても多いです。
──確かにその通りですね。しかし、アプローチが悪いと指摘されたときに、アドレスやスイングはよかったときと同じです。しかし、同じに構えて振ってもよかったときのようには寄らないのです。
吉本 それは自分がそう思っているだけで、実はアドレスもスイングも違っているのでしょう。それを放っておくと、徐々にさび付いて、トップやザックリが起きてきますよ。
──実はもうその兆候があります。トップやザックリすればすぐにダボです。打つのが怖くなって、ミスが続きます。緊張して体が硬直し、手が動かなくなります。
吉本 壊れ始めですね。さび付いて壊れていく。今すぐに修繕しないといけません。それも一から直したほうがいい。そのほうが早いからです。アプローチに自信がない人や、うまく打てたためしがないという人、これから私が行うアプローチレッスンをぜひとも実践してください。アドレスをマスターするだけで、誰でも簡単にうまくアプローチできます。
──それはうれしいです。一から直すといっても大変そうではないですね。早速お願いします。
吉本 アプローチは生の芝で練習するのが一番です。コースでやりましょう。
吉本 フェアウエーやグリーンなど芝のメンテナンスがとてもよい埼玉県の越生ゴルフクラブにやってきました。2グリーンで一つ一つのグリーンが小さいため、このコースでよいスコアを出そうと思ったら、よりアプローチが重要になりますね。
──そう思います。なかなかグリーンをとらえられないコースです。それだけにピンから30ヤード以内なら1ピンには寄せたいです。
吉本 私が教えるアプローチなら、いきなりそのことがほぼ100%可能になりますし、少し練習して距離の違いをマスターすれば、1メートル以内に寄せられるようになります。
──ぜひ、教えてください。
吉本 使うクラブは48度~52度のアプローチウエッジで、大事なのはアドレスです。「小文字y打法」と呼んでいます。つまり、30ヤード以内のアプローチでは、アドレスで小文字の「y」を作ります。
どのようにするかというと、(1)ボールは体の真ん中で、ソールをぺたんと地面につけ、グリップは短めです。(2)両足はスクエアスタンス。(3)フェース面もスクエアにし、(4)10ヤードの距離なら、スタンス幅は両足の間に足が1つかその半分入るくらい。かなり狭くなります。そうして、(5)普通に構えたら、腰を左に少しスライドさせます。(6)手も腰につれて左に移動するので、自然にハンドファーストになります。しかし、頭の位置はいつも通りで動かさないため、体は「く」の字になります。上半身の軸が少し右に傾いた状態になります。


──正面から見させてもらうと、確かに左腕とシャフト+右腕で「y」の字になっています。自分も(1)~(6)の手順でアドレスを作ってみますね。
吉本 スタンスとフェースはオープンにしない。そこにやさしく打てる鍵があります。なかなかいいですが、腰を左にスライドさせたと同時に頭も左に動いています。これではうまく打てません。それと「y」字になるように。もう少しハンドファーストにしてください。
──自分では頭まで左に動かしたつもりはないのですが、動いてしまうのですね。それにハンドファーストも結構しているつもりなのですが。
吉本 左腕とシャフトが一直線になるようにしてください。そうして「y」字にできれば、そのままストロークしても自然にうまく打ててしまうので、大事なポイントです。
──これくらいでしょうか? 自分ではかなりのハンドファーストで、フェースがかなり被って見えます。
吉本 それでいいです。そのアドレスをスマホで写真に撮ってみましょう。
──写真で見ると、吉本プロのアドレスに似ています。ハンドファーストもちょうどよいし、頭も左に動いていない。上体の「く」の字もできている。何より小文字の「y」になっています。
吉本 完璧ですよね。アプローチをうまく打つなら、このアドレスは絶対に必要です。いつもスマホで写真に撮ってチェックするとよいですよ。
──本当ですね。
吉本 さあ、ここからクラブを振るわけですが、まずは私がやってみます。打ち方は(1)アドレスで作った「y」字をスイング中、できるだけキープします。このとき手首を固定して、できるだけ手首を使わないこと。とはいえ、手首を固める必要はありません。自然に少しだけ使うのはOKです。(2)アドレス時の「く」の字をキープしてスイングします。右に傾いた上半身の軸を維持して振ります。(3)スイング中、下半身はできるだけ使わない。上半身だけでスイングするイメージです。これも結果的に少し使うことになってもよいです。(4)バックスイングとフォロースルーの大きさを同じにするイメージでスイングします。(5)打つ距離に合わせてスイング幅を変えます。
──距離とスイング幅はどういうふうに考えればよいのでしょうか?
吉本 10ヤードは7時半~4時半、20ヤードは8時~4時、30ヤードは8時半~3時半の振り幅です。このときバックスイングは左腕、フォロースルーは右腕の位置となります。これはあくまで目安であって、その人が思う振り幅やスピード、クラブのロフト角や重量、グリーンの硬さや速さによっても距離は変わります。大事なのは、自分のアプローチウエッジを使い、それぞれのスイング幅で大体何ヤードになるかを、しっかり把握しておくことです。






──3つの振り幅で何ヤードになるかですね。
吉本 打ち方のポイント(6)はダウンスイングでフルスイングのように無理に加速しないということです。振り子やブランコのイメージでスイングします。(7)はインパクトでクラブヘッドを入れる位置です。これは私が「ゴールデンアングル」と呼んでいる、ボールの赤道より下の部分です。
赤道から地面までヘッドが入る場所はどこでもよいです。なので、ボールの下にきっちりと入れようと思わなくてよいです。それもソールのバンスを滑らせるのなら、ボールの手前からで構わない。距離は赤道下に入れるポイントでキャリーとランが変わりますが、トータルは変わらないんです。だから安心してアバウトに打ってほしいです。

──それはいいですね。
吉本 ただし、ダウンブローに打つのではなく、レベルブローに打つ。そうすればソールを滑らすこともできますので。では、(1)~(6)に気をつけて花道の10ヤードから打ってみますね。
──数発、練習球を打っただけで、吉本プロはグリーンの硬さや速度を把握してしまった。そして10ヤードはOKに、20ヤード、30ヤードも1メートル以内にぴたりと寄せてしまいました。さすがですね。
吉本 そうですか? では、今と同じように10ヤードをやってみてください。
──まずは先程行ったアドレスをしっかり作ることですよね。10ヤードなのでスタンス幅は両足の間に足1つ分。ボールは真ん中、スクエアスタンス、スクエアフェース、ここから頭を動かさずに腰を左にスライドして、ハンドファースト。上体の軸は右に傾けた「く」の字。さらにハンドファーストにして、フェースは被っているくらい。両腕とクラブで小文字の「y」を作るわけですね。
吉本 そうです。アドレスは完璧ですよ。
──では、打ってみますね。この「y」字のアドレスを維持して、7時半~4時半の振り幅でスイングしますね。……素振りもせずに打ったのに、トップもダフリもせずにうまく打ててしまいました。スピンも効いています。距離は8ヤードと、10ヤードより2ヤード足りませんでしたが、機械的にうまく打ててしまった感じがします。
吉本 そうなんです。このアドレスを作って振ればミスがなくなる。下半身を動かさないから自然にインサイドにバックスイングされ、そのまま振り出せばよいだけになります。手首の角度もキープできているので、うまく打ててしまうのです。
──スイング軌道も手首のことも意識しなかったです。自然にクラブに任せられる感じです。
吉本 頭も動かしていないし、上体の「く」の字や小文字「y」がキープできているので、うまくボールがとらえられています。
──それも気にせずに自然にできてしまうのです。
吉本 それはアドレスをしっかり作れたことが大きいです。後は頭を動かさず、下半身を動かさなければ、きれいにヒットできます。実はこの「小文字y打法」はインパクトの打点を自然に安定させることを目的にしています。
──なるほど。それでトップやダフリが解消されるわけですね。まったく安心してアプローチすることができます。
(次回は8月26日に掲載予定。文:本條強、協力:越生ゴルフクラブ)