米雇用、7月は16万人増 貿易戦争で伸び鈍る - 日本経済新聞
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米雇用、7月は16万人増 貿易戦争で伸び鈍る

【ワシントン=河浪武史】米労働省が2日発表した7月の雇用統計(速報値、季節調整済み)は、景気動向を敏感に映す非農業部門の就業者数が前月比16万4千人増えた。増加幅は市場予測(16万人程度)並みを保ったものの、前月(19万3千人)からは減速。高水準だった2018年と比べて伸びが大幅に鈍っており、米連邦準備理事会(FRB)の追加利下げに道を開きそうだ。

失業率は3.7%と前月から変わらず、およそ半世紀ぶりという歴史的な低水準をほぼ保っている。平均時給は27.98ドルと前年同月比3.2%増え、12カ月連続で3%台の伸びを維持した。米景気は拡大局面が11年目に突入して戦後最長を更新したが、雇用の底堅さが経済を支えている。

もっとも、就業者の伸びは徐々に鈍化してきた。直近3カ月の増加幅は月平均14万人にとどまり、18年の同22万3千人から大きく減速した。19年1~6月は同16万5千人で、労働市場の拡大は少しずつブレーキがかかりつつある。

中でもトランプ米大統領がこだわってきた製造業は、19年に入って月平均の就業者の増加幅が8千人にとどまり、18年の2万2千人から伸びが大幅に鈍化している。中国との貿易戦争などで4~6月期は輸出や設備投資が前期比マイナスに転落しており、堅調だった雇用にも下押し圧力がかかっている。

FRBは7月31日に政策金利を0.25%引き下げ、金融危機直後だった08年12月以来、10年半ぶりの利下げを決断した。中国などとの貿易戦争で先行き不安が強まったためで、パウエル議長は「利下げは世界景気の減速と貿易政策の下振れリスクへの備えとなる」と主張した。

焦点は早くも先行きの追加利下げシナリオに移っている。パウエル氏は今回の利下げを「政策のサイクル半ばの調整」と表現し、長期的な利下げ局面への突入を否定した。ただ、8月1日にはトランプ米大統領が中国への「制裁関税第4弾」を発動すると表明。雇用の伸びも鈍化が目立ち始めており、早期に追加利下げに踏み切る可能性が浮上しそうだ。

「インフレ圧力も抑制されたまま」(パウエル氏)だ。物価上昇率は6月も前年同月比1.4%にとどまり、目標の2%を8カ月連続で下回っている。FRBは企業や消費者が物価は当面上がらないと考えるようになれば、日本のように賃上げや値上げも抑えられて、物価そのものが実際に上がりにくくなると警戒している。

先物市場では2日、9月中旬の会合で追加利下げに踏み切るとの予測が80%以上に高まった。利下げした7月31日は、パウエル氏の慎重な発言で9月の追加緩和の観測は50%に低下していた。米長期金利が2%を切るなど、金融資本市場は追加利下げの催促を強めており、パウエル氏に決断を迫りつつある。

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