忠臣蔵、艶やかに哀れに(文楽評)
夏休み文楽特別公演

関西タイムライン
2019/8/2 7:00
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大阪・国立文楽劇場は「夏休み文楽特別公演」。3部制で、2部は4月から始まった開場35周年を記念する「仮名手本忠臣蔵」連続上演の2回目。前回は事件の発端、次回は討入(うちい)り前後を描くが、最も重要な場面は今回の五段目から七段目まで。

早野勘平の苦しい胸の内を人形ににじませた吉田和生(左手前)

早野勘平の苦しい胸の内を人形ににじませた吉田和生(左手前)

登場するのは、不利な条件を克服して仇討(あだうち)に加わろうと苦闘する早野勘平と寺岡平右衛門。周囲の人たちを巻き込んでドラマは展開する。

「早野勘平腹切の段」は豊竹呂勢太夫・鶴澤清治。呂勢太夫は舅(しゅうと)を殺してしまったと思い込み、悲運のうちに死んでいく勘平の苦渋を切腹後の述懐に滲(にじ)ませた。人形は吉田和生が勘平のいたたまれなさを、終始うつむき、身を縮めるようにして表現する。おかるの吉田一輔は、若い女房らしい華やぎがあり、その分、夫との別れの辛(つら)さが現実味を帯びた。吉田簑二郎の与市兵衛女房は勘平に詰め寄る気丈さを見せ、最後の悲嘆に哀れみが増した。

「祇園一力茶屋の段」は浄瑠璃が掛合(かけあ)い。平右衛門の豊竹藤太夫は下手の出床で無本で語り、小気味よい。二階座敷のおかるは吉田簑助。今月で86歳になるが、艶やかさは不変。

大星由良助は桐竹勘十郎。酔態と本心を巧妙に演じ分ける。白眉はおかるを殺すと決めて奥に入る前に見せるわずかな愁い。目的のための手段とはいえ、犠牲者を出すことへのためらいをしっかりと描出する。非情の中にも憐憫(れんびん)の情がある。

所見日の平右衛門は吉田玉志(Wキャストで現在は吉田玉助)。野趣な所作で足軽という身分を感じさせながら、仇討参加への強い気持ちを前のめりの姿勢で示した。

1部は親子劇場、3部はサマーレイトショー。5日まで。

(大阪樟蔭女子大教授 森西真弓)

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