食品かすを宝の山に うどん発電やミカンCNF
SETOUCHI2.0 「食」を極める(5)

2019/8/2 7:30
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温暖な気候で育まれた果実や海の幸、全国区のうどんなど瀬戸内は豊かな食の宝庫だ。一方で食品廃棄物の有効活用は、環境負荷などの観点から世界的な課題となっている。これまで用途が限られていた残りかすを「宝の山」と捉え、技術開発で資源にする。そんな「2度おいしい」取り組みが芽吹きつつある。

うどん打ち体験には県外からの観光客も参加する

うどん打ち体験には県外からの観光客も参加する

香川の名物、讃岐うどん。総務省の2018年家計調査によると「日本そば・うどん」の外食支出額は、高松市で1世帯当たり年間約1万4000円と全国平均の倍を超える。消費量が多いからこそ、切れ端や規格を満たさなかった「廃棄うどん」が問題になる。

ソウルフードの廃棄を減らし、有効活用を目指すのが「うどんまるごと循環プロジェクト」。プラント製造のちよだ製作所(高松市)や製麺業のさぬき麺業(同)などによる任意団体「うどんまるごと循環コンソーシアム」が担う。活動は大きく2つで、廃棄うどんを活用した「うどん発電」と、発電後の残りかすから肥料を製造して使う小麦栽培だ。

ちよだ製作所のプラントでは、廃棄うどんなどを発酵させてメタンガスを生成する(高松市)

ちよだ製作所のプラントでは、廃棄うどんなどを発酵させてメタンガスを生成する(高松市)

うどん発電では廃棄うどんや生ごみに水を加えて発酵させ、発生したメタンガスを燃やして発電する。廃棄うどんなど毎日2トンをプラントに投入し1日当たり400キロワット時を発電する。30~40世帯分の電力を賄える計算だ。年間約370万円の売電収入を上げる。

メタンガスを生成したあとの残りかすは肥料となる。高松市内の農家に提供し、液体肥料は米栽培に、固体肥料は小麦栽培に活用する。栽培した小麦で、さぬき麺業がうどん打ち体験を開催するなど、食の循環をつくりだした。

今後は参画する飲食店を増やせるかが課題だ。ちよだ製作所のプラントまで廃棄うどんを運ぶコストが重荷となる。参画自体が飲食店にとって有益になるような仕組み作りが求められる。同コンソーシアムの久米紳介事務局長は「廃棄自体を減らす取り組みにも注力していきたい」と話す。

残りかす活用を一歩進めて、商機を見いだす動きも始まった。日本一の柑橘(かんきつ)生産量を誇る愛媛県。ミカンやイヨカンをジュースに加工した時に生じる搾りかすで、植物由来の新素材「セルロースナノファイバー(CNF)」を製造する取り組みが、県や地元企業の連携で進む。

「愛媛のまじめなジュース」のキャッチコピーで有名なポンジュース製造の、えひめ飲料(松山市)もその一つ。同社では年間1万トンの柑橘を搾汁するが、ジュースになるのは半分ほどで、残りは皮や水分といった搾りかすとなる。

柑橘由来のCNFは液体に混ぜると、右端の試験管のように物質の沈殿を防ぐ(松山市)

柑橘由来のCNFは液体に混ぜると、右端の試験管のように物質の沈殿を防ぐ(松山市)

そのまま産業廃棄物として処分すると年間で数千万円単位の費用がかかる。搾りかすの2割程度を占める外皮は様々な用途に活用する。例えば養殖魚の飼料に配合すれば、爽やかな風味の付いた愛媛県のブランド魚「みかん鯛(だい)」を生産できる。乾燥させて粉砕すれば陳皮として七味の原料になる。

県や同社などが技術開発した「柑橘ナノファイバー(NF)」にはこの外皮を提供する。柑橘NFは高い圧力を加え繊維をほぐして製造する。一般的なCNFの原料となるパルプと比べてほぐしやすく、薬品を使わずに効率良く造れるという。

柑橘NFには液体内で物質を分散させる効果や、高い保水力がある。認知機能低下を抑えるとされるオーラプテンなど、柑橘由来の機能性成分も含むため、飲料や化粧品などへの利用が見込まれる。

県の食品産業技術センター(松山市)の福田直大主任研究員は「広島でも瀬戸内レモンなど柑橘栽培は盛んで、技術の応用が広がる可能性がある」と波及に期待する。

使い勝手が良い半面、普及に向けての課題はコストだ。パルプのCNFは現在1キログラムあたり5000~1万円程度だが、量産化が進めば500円程度まで安価になると見込まれる。一方で柑橘NFは同程度まで安くするのは難しいと見られている。実用化に向けては愛媛製紙(愛媛県四国中央市)が製造コスト低減や用途開発に取り組んでいる。(この項おわり)

増渕稔、辻征弥、沢沼哲哉、棗田将吾、田口翔一朗、谷川健三、桜木浩己、河野真央が担当しました。

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