2019年9月17日(火)

米ロ、中距離ミサイル開発加速 INF条約、2日失効

2019/8/1 18:37
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【デトロイト=中村亮、モスクワ=小川知世】米国と旧ソ連が1987年に締結した中距離核戦力(INF)廃棄条約が2日、失効する。米国とロシアいずれも相手の条約違反を非難し、延長協議がまとまらなかった。トランプ政権は新たな核軍縮構想を探るが、不可欠としている中国の参加は現時点で見込めない。条約の失効でミサイル開発競争が激しくなる恐れがある。

軍拡競争につながるとの懸念がある(米カリフォルニア州でのミサイル実験、2017年)=ロイター

INF条約は核弾頭を搭載できるかにかかわらず射程500~5500キロメートルの地上配備型ミサイルの廃棄を定めた条約。1991年6月までに2692基のミサイルが廃棄された。ミサイル全廃を定めた初めての条約で、冷戦期に過熱した核軍拡競争に歯止めをかける転機となった。

ただ、近年はロシアによるウクライナ南部・クリミア半島の併合などを受けた米ロ関係の悪化を背景に、条約を柱とした軍縮体制の維持が危ぶまれていた。米国務省は2014年、ロシアの巡航ミサイル「9M729」が条約違反と指摘。今年2月に条約破棄を通告した。一方、ロシアは米国が東欧や日本に配備を進めるミサイル防衛(MD)システムが条約に反すると主張。双方に歩み寄りがみられないまま、期限切れを迎える事態となった。

条約の失効で、残された米ロの核軍縮の枠組みは21年2月に期限を迎える新戦略兵器削減条約(新START)だけとなる。トランプ政権は核戦力を増強する中国の参加が不可欠だと主張。ロシアと6月に中国を加えた枠組みづくりの必要性で一致した。

ただ、核戦力で米ロに劣る中国は「米ロの核軍縮が先決だ」として反対の姿勢を崩しておらず、3カ国による協議入りへの道筋すらみえない。元ホワイトハウス高官は「中国の姿勢を受け、条約延長への反対論が米政権内で優勢となっている」と明かす。

トランプ政権はINF条約の失効後、中ロに対抗するために、現在保有していない中距離ミサイルの配備を急ぐ。エスパー米国防長官は7月中旬の議会公聴会で、地上配備型の中距離ミサイル開発に着手すると明言した。海上発射型の巡航ミサイルなどを改良すれば比較的容易に開発できるとみられている。

配備先では米領グアムが有力視されている。中国本土からグアムを射程におさめる中距離ミサイル「東風(DF)26」を開発した習近平(シー・ジンピン)政権をけん制する狙いがある。

ロシアも中距離ミサイルの開発を急ぐ。プーチン大統領は条約失効をめぐり「鏡のように同じ態度で臨む」と対抗措置をとる考えを表明。すでに極超音速の中距離ミサイルに着手すると明らかにしている。

ロシアはリトアニアとポーランドの間に位置する最西端の飛び地、カリーニングラードに現在、改良型の短距離ミサイルを置いているが、新たに中距離ミサイルを配備し、欧州全域を射程におさめるとの観測もある。

アジア太平洋地域での影響力を強めるため、日本や中国に近い極東地域に中距離ミサイルを配備する可能性も高い。ロシアの米国カナダ研究所のパベル・ゾロタリョフ氏は「米国が中国周辺に中距離ミサイルを配備したら、ロシアも極東シベリアへの配備を検討するかもしれない」と語る。

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