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クールジャパン機構が米アニメ配信買収、北米進出を支援

官民ファンドの海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)は8月1日、アニメ配信やグッズ販売の米センタイホールディングスを買収すると発表した。約32億円で発行済み株式の過半を取得する。経営権の取得と役員の派遣でセンタイ社の経営基盤を安定させ、幅広い日本アニメを北米市場に供給する。

「多くの才能あるクリエーターを失った」。1日の記者会見で、センタイ社のジョン・レッドフォード最高経営責任者(CEO)は京都アニメーションの事件を振り返った。優秀なクリエーターの確保がアニメ産業には重要だと話し、「詳細はまだ言えないが、優秀な人材を呼び込み、活躍できる場をつくる施策に取り組みたい」と話した。

センタイ社はアニメ業界で長い経験を持つレッドフォード氏が2008年に創業し、これまでに700作品の配信や商品化を手がけてきた。ニッチなアニメ作品も拾い上げ、プロモーションできるのが強みだ。クールジャパン機構の北川直樹社長も「センタイ社をサポートすれば、幅広い日本のアニメに収益を還元できる」と太鼓判を押す。

クールジャパン機構はアニメの海外展開を支援分野の一つに据える。これまでも、海外配信サイトを手がけるアニメコンソーシアムジャパン(ACJ)やサブカルチャー情報を発信するトーキョー・オタク・モード、アニメや映画作品に字幕をつけるSDIメディアグループに出資してきた。

ただ、ACJが事業撤退するなど現状の投資効果は十分ではない。個別案件では利益確保が難しいケースもある。センタイ社を既存の出資先と連携させるなど、30社を超えるこれまでの投資実績を生かす取り組みが課題になる。

「アニメは日本の宝」。レッドフォードCEOはそう断言する。センタイ社は京都アニメーションへのいち早い支援で注目を集めた企業だ。7月18日の事件当日からネットで寄付を募り、31日までに6万8000人から236万4520ドル(約2億6000万円)を集めた。今後、税負担なども考慮しながら京都アニメーションへの寄付手続きを進める方針だ。

京都アニメーションは「涼宮ハルヒの憂鬱」「けいおん!」「らき☆すた」「Free!」などヒット作を連発。熱心なファンを獲得し、視聴者が作品にゆかりのある場所を訪れる「聖地巡礼」のような社会現象も起きた。

登場人物が見せる表情や動作の細やかな表現など制作力の高さは有名で、アニメファンの間で「京アニ」はブランドになっていた。その評判は海外にも広がり、放火事件後には米アップルのティム・クックCEOや国連のグテレス事務総長ら政財界の首脳が哀悼の意を表明している。

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