2019年8月20日(火)

荷受け伸びない…改革ヤマトの誤算 4~6月営業赤字
顧客が自主配送・中小にシフト

宅配クライシス
企業決算
サービス・食品
2019/7/31 20:00
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宅配便事業の従業員はこの1年で1万人強増えた

宅配便事業の従業員はこの1年で1万人強増えた

ヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングス(HD)の業績が低迷している。31日発表した2019年4~6月期の連結決算は、本業のもうけを示す営業損益が61億円の赤字(前年同期は95億円の黒字)だった。人手不足を背景に果敢な値上げや働き方改革を進め、満を持して荷受けを増やす方向にかじをきったが、取扱数が思うように回復しないためだ。背景にはヤマトを離れた顧客が自社配送を始めるなどの誤算があった。

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「運ぶ体制は出来上がったが、取扱数が思ったほど伸びていない」。決算会見に臨んだ芝崎健一副社長は厳しい表情を浮かべた。19年4~6月期の売上高は3817億円と微増を確保したが、ドライバーなどの人件費を吸収できず、営業赤字になった。営業赤字は19年1~3月期に続き、2四半期連続だ。

宅配便の売り上げが全体の8割を占めるヤマトにとって、取扱数の増減は業績を左右する生命線だ。ドライバー不足などを背景に17年10月から荷受けを抑えてきたが、再成長の起点と位置づける20年3月期は宅配便の取扱数で前期比4%増の目標を期初に掲げていた。

しかし、4~6月は宅配便の取扱数は0.3%しか増えなかった。6月だけでみると前年比2.7%減に悪化した。最大顧客のアマゾンジャパン(東京・目黒)が自社配送網の整備を強化するなどした結果、一時的に減らしたつもりの荷物が戻っていない。楽天も大手に依存しない自社配送網の整備を強化。ヨドバシカメラも首都圏や大阪、福岡で自社による当日配送サービスを本格的に始めている。

さらなる誤算は、荷受けを抑制する総量規制と並行して進めた値上げが業績に直結しなかったことだ。ヤマトは17年、アマゾンなど大口の法人顧客約1100社と値上げ交渉を開始。ネット通販の拡大に伴う荷物数の急増に配送体制が追いつかず、ドライバーの長時間労働が表面化したことがきっかけだった。値上げの大義名分はドライバーの待遇改善や人材確保で、ヤマトが提示した値上げ幅は4割を超えた例もあった。顧客の約4割は契約を打ち切り、ヤマトより割安な日本郵便など他社に切り替えた。

値上げで前期の宅配便の単価は2年前と比べて2割強上昇し、荷物も減って収支は改善し、配送体制の強化に費用を投じることができた。夕方以降に特化した配達員「アンカーキャスト」の採用を進め、ドライバーら宅配便の従業員数は1年で1万人強増えた。サービス網の維持すら危ぶまれた頃とは一転して体制は整った。ただ、ふたを開けてみれば思うように荷物は集まらない。人手不足は緩和したものの、人件費などコストだけがのしかかる事態になった。

もうひとつの誤算は競争が厳しく、荷動きなども想定より悪化する可能性があるためだ。ヤマトとの契約をやめた顧客の受け皿となった日本郵便も18年秋以降は伸びが大きく縮小し、佐川急便もほぼ横ばいが続く。今秋の消費増税で個人消費が減速すれば、荷物の奪い合いはより一層激しくなりそうだ。

ヤマトの幹部は「(7月の取扱数も)目を疑うような悪い数字だった」と明かす。取扱数で今期4%増としている目標達成は「到底無理」とあきらめムードも漂い始めた。31日には中国の貨物事業で減損損失が発生し、20年3月期通期の純利益が予想を20億円下回る前期比48%増の380億円になると発表した。営業利益は23%増の720億円で過去最高とする予想を据え置いたが、下方修正リスクはくすぶる。

新たな一手として、宅配便のノウハウを生かした企業間物流を強化する方針で、ある幹部は「この1年が勝負になる」と力を込める。宅配便の輸送網にグループ会社が持つ保管や決済機能などを組み合わせた効率的な物流を売り込む。人件費上昇が続くなか、値下げで再び顧客を集める選択肢はない。革新的なサービスで宅配便の市場を切り開いたヤマトの地力が試されている。(宮嶋梓帆、松川文平)

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