奈良市役所 「耐震」で決着へ 知事の移転案退け

2019/7/31 6:45
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耐震化か移転かで揺れていた奈良市役所の庁舎は当面、建物の「長寿命化」でしのぐ見通しとなった。市議会の特別委員会が30日、耐震工事に関する2019年度の補正予算案を可決した。荒井正吾知事がまちづくりの観点から移転を提案し、市と対立した庁舎問題が節目を迎えた。

奈良市役所本庁舎

奈良市役所本庁舎

本庁舎は3棟が大地震で重大な損傷を受ける恐れがある。可決したのは19年度分の事業費約12億7千万円。20年度末に竣工する予定だ。総事業費は約34億円で国の緊急防災・減災事業債制度を活用し、実質的な負担は17億円程度という。

市と県の意見対立の発端は19年1月。荒井知事が市議会の勉強会で、平城宮跡の南側の積水化学工業の工場跡地への移転案を披露した。市は昨年、耐震化基本構想を発表済みだった。

荒井知事の主張の背景にあるのは、奈良公園と平城宮跡を結ぶ「大宮通り」をメインストリートに位置づけるまちづくりだ。18年の平城宮跡歴史公園「朱雀門ひろば」、今春の奈良公園バスターミナルに続き、来春は大型コンベンションセンターと「JWマリオット・ホテル奈良」が開業予定。市庁舎は同ホテルの真向かいに立地し、荒井知事は「(移転すれば跡地は)民間からの引き合いがある」とした。

市役所の向かいではホテル建設が進む

市役所の向かいではホテル建設が進む

知事側は「移転建て替え」と「耐震工事後に現地建て替え」のコストを比べ「長期的には移転の方が得」とした。市側は「耐震工事後、規模を縮小して移転建て替え」を想定し、知事案を下回る試算をはじき出した。

70年程度先までの試算を出し合った末、市は「耐震案を財政面で覆すようなインパクトはない」「(移転には)市民合意が必要」(仲川げん市長)などとして、知事案を退けた。市議会では県市の関係悪化を懸念する声も上がった。

荒井知事は26日の記者会見で「これ以上、こちらからアプローチすることはない」と話し、市での議論に任せる考えを示していた。県市の一連のやり取りは物別れに終わる形となったものの、人口減やICT(情報通信技術)が進む中でのまちづくり戦略や自治体機能の将来像などを誰がどう描くかという論点を浮き彫りにした。(岡田直子)

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