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今日も走ろう(鏑木毅)

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50歳の再挑戦 本番まで1カ月、応援を原動力に

2019/8/1 5:30
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先日、50歳で再びUTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)を目指す「NEVERプロジェクト」の応援イベントを東京、大阪で開いた。来場希望者が500人を超えたと聞き、改めてこの挑戦の重みを感じた。30代後半には全く注目されなかったことを考えると、この年齢でチャレンジする意義や挑戦できることのありがたみを実感する。

来場者から手書きのメッセージをいただいたので、レース後半のエイドステーションに持ち込むことを予定している。当日はおそらくクタクタになり弱気になっている私の心を大いに奮い立たせてくれると思う。

タペストリーに応援メッセージを書き込んでもらった(大阪での「NEVER」応援イベント)

タペストリーに応援メッセージを書き込んでもらった(大阪での「NEVER」応援イベント)

大学時代の恩師でもある瀬古利彦さん(現日本陸連マラソン強化戦略プロジェクトリーダー)は1984年ロサンゼルスオリンピックのマラソン代表として日本中の期待を背負った時、応援の言葉が苦しくてたまらなかったそうだ。私も10年前のUTMBで優勝を目指していたころはまったく同じ心境だった。「次こそは世界一を」と言われると、なぜ無責任に選手を苦しめる言葉を安易に投げかけるのだろうと疑問が先に立ちつらくもあった。

だが今は全く違う。応援の言葉を素直にうれしくありがたく受け止められるのだ。10年前と同じレースに出場するのにこの違いはなぜだろうか。それだけ歳をとり性格も枯れてきたということだろうか。

先日も長野県で100キロメートルのウルトラトレイルレースに出場した。先行する160キロメートルカテゴリーの選手たちを追い抜く際に、多くの選手から「UTMB頑張ってください」と応援してもらった。私よりも長い距離を走り、つらいはずの選手から温かみのある言葉をかけられるのだから、より一層心に染みる。

とはいえUTMB本番までもう1カ月を切った。さすがにこれからの数週間はプレッシャーを感じることだろう。私には長年培った独自のメンタルコントロール法がある。レース直前期は他者からの期待でプレッシャーにつぶされないよう、あくまでレースは自分のためであり、最大限楽しむことだけを考えるのだ。そして自分自身が最高の準備を経て臨んだのであればいかなる結果をも受け入れようと腹をくくると平静を保つことができる。

だがレース終盤の地獄にいるような苦しい局面に置かれると支えになるのはやはり応援が一番。苦しい時に助けてくれた方々や応援してくれるファンの顔や温かい言葉が、折れかかった心を支えてくれる。

地球の裏側の隔絶された山地帯を走っている時でさえ、はるかかなたからインターネットで応援してくれる人々がいることに思いをはせつつ、「この坂は歩かないぞ」などと自分を奮い立たせる。このように現地にいなくてもどこかで応援してくれる人々の思いを感じとることができるだけで火事場のばか力が出ることもある。

応援される立場に今、自分がいるという幸せをかみしめ、さまざまな形で応援してくれる人々に心から感謝し、前向きな力の原動力としたい。

(プロトレイルランナー)

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