メルカリ、J1鹿島の経営権取得 Jリーグ理事会承認
フリマアプリ大手のメルカリは30日、サッカーJ1の鹿島アントラーズの経営権を取得すると発表した。運営会社の株式の約6割を日本製鉄などから買い取る。メルカリは2017年からアントラーズのスポンサーを務める。サッカークラブの経営権を巡っては重厚長大型からIT(情報技術)企業へ移る例が相次いでおり、産業構造の転換の象徴といえそうだ。
クラブ運営会社の鹿島アントラーズ・エフ・シー(茨城県鹿嶋市)の株式譲渡契約を同日、日本製鉄と締結した。株式の取得日は公正取引委員会の認可を条件に8月30日を予定している。取得額は約16億円。運営会社の2019年1月期の売上高は前の期比40%増の73億円、営業損益は5億8300万円の黒字(前の期は1億3800万円の赤字)だった。
経営権取得は7月30日に開かれたJリーグ理事会で承認された。メルカリは13年の設立で、18年に東証マザーズ市場に上場した。鹿島のブランド力や集客力などを生かし、フリマアプリやスマートフォン決済「メルペイ」などの事業拡大につなげる考えだ。
メルカリの小泉文明社長は同日、東京都内での記者会見で「メルカリをまだ知らない人、利用したことがない人はまだいる。アントラーズと一緒に顧客とファンを拡大していきたい」と述べた。具体的には「フリマアプリは20~30代女性の利用が多い。(鹿島買収は)男性にアプローチする上では大きい」という。

鹿島アントラーズは住友金属工業(現日本製鉄)のサッカー部を母体に1991年10月、Jリーグ参加球団の1つとして発足した。これまで国内三大タイトル(J1リーグ、Jリーグカップ、天皇杯全日本サッカー選手権大会)では最多の19回の優勝回数を誇る。また18年のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で優勝するといった国際大会の実績もある。
サッカークラブの経営権を巡っては、フィットネスジム運営のRIZAPグループが2018年4月、湘南ベルマーレ(神奈川県平塚市)の、ネット広告大手のサイバーエージェントが同年10月にFC町田ゼルビア(東京都町田市)の経営権をそれぞれ取得。ITや新興企業の経営参画の動きが相次いでいる。
旧来型企業は成長が鈍る中、本業の収益に直結しないクラブ運営から手を引く。日本製鉄幹部は「BtoB(法人向け)企業である当社より、BtoC(消費者向け)で成長するIT(情報技術)企業に運営してもらった方がいい」と話す。
メルカリは仮想現実(VR)や拡張現実(AR)を使ったイベントや観戦サービス、広告なども検討する。ホームスタジアムである茨城県立カシマサッカースタジアムは約4万席の規模だが、小泉社長は「シートアレンジなどで2万席後半規模のスタジアムにし付加価値を高めたい」と語った。