2019年9月16日(月)

欧米、モノの価格上がらず、市場、中銀に緩和催促

2019/7/29 21:26
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【ニューヨーク=後藤達也】欧米で物価上昇の鈍化が鮮明になっている。雇用が好調な米国でも中央銀行が目指す「2%」に届かず、金融市場では将来もこうした状況が続くとの見方が広がる。技術革新などを背景にモノの値段が上がりにくくなり、景気が良くても金融緩和を促す構図になっている。米連邦準備理事会(FRB)は7月末、利下げに動く見通しだ。

新興国からの安価な製品の流入や、技術革新によってモノの値段が上がりにくくなっている=ロイター

金融市場で物価に連動する債券の取引をもとに今後10年間で物価がどれほど上がるかを測ることができる。米国では昨年は2%を小幅に超えていたが、昨年後半から下がり始めた。7月には1.6%台と、約3年ぶりの低さとなった。ユーロ圏では1.0%台、日本は0.1%台に低迷する。

この半年間のインフレ期待の低下は世界経済への不安を映している。米中貿易戦争などで世界的に需要が弱まるとの懸念が広がり、物価が上がりにくくなるとの見方が強まった。

底流では構造要因も作用している。米国では新興国からの安価な製品が増えたことなどを理由にモノの値段が上がりづらくなった。家具や衣服など、10年前と比べて値段がほとんど変わっていないものや値下がりしているものもある。ネット通販の普及により、既存の店舗では価格競争が強まった。スマートフォンの普及はカメラやカーナビなどの需要を奪った。

米国は景気拡大が続いているが、この5年間の物価上昇率は年平均で1.3%。2%を超えたのは原油価格が大きく上昇したときなど一時的だった。ユーロ圏や日本は0~1%の期間が長い。FRBのパウエル議長は「世界中で物価上昇率が弱まる中で、中銀は苦労している」と指摘する。

インフレ期待の低下が実際の物価に影響を与える面もある。多くの人々が「物価は上がりづらい」と考えると、消費者の間で値上げへの抵抗感が強まる。日銀の黒田東彦総裁は「賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く残っている」ことが物価上昇を抑える最大の理由と指摘している。

7月末に利下げする構えを見せるFRBは予想インフレが下振れしていることを理由の一つに挙げる。パウエル議長は10日の議会証言で「(金融緩和で)後手に回らないようにするのが(デフレが長期化した)日本から得た教訓だ」と述べた。「2%」が遠い日銀や欧州中央銀行(ECB)はこの10年、一度も利上げできていない。

米国ではモノの価格が低迷する半面、サービス価格は年3%のペースで上昇し続けている。サービス業はコストに占める人件費の割合が高く、賃金上昇を価格に転嫁せざるを得ないからだ。特定のサービスへの出費に糸目を付けない富裕層の消費傾向も背景にある。

サービスでは特に医療費や教育費の高騰が目立ち、社会問題にもなっている。好景気・株高が続く中での金融緩和は富裕層をいっそう潤わせ、格差の拡大につながるとの懸念も出ている。

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