大阪ガス、米シェール開発全株取得、日本初
大阪ガスは29日、シェールガス開発を手掛ける米サビンオイル&ガスを買収すると発表した。約650億円を投じ、年内に同社の全株式を取得する。日本企業による米国のシェール開発会社の100%子会社化は初めて。国内ガス小売市場が先細る中で、大ガスは海外シフトを鮮明にする。ただ、資源の生産性などではリスクを伴う。
サビンは米テキサス州に、琵琶湖の1.5倍に相当する1000平方キロメートルの鉱区を持つ資源会社で、液化天然ガス(LNG)換算で年間170万トンのガスを生産する。米国ではガス需要が旺盛で、現地の卸売会社向けに販売している。
大ガスはサビンの親会社から全株式を取得する。すでにサビンの鉱区の権益を2018年に一部獲得していた。買収により大ガスの取り扱う天然ガスはLNG換算で1割ほど増える。テキサス州にある鉱区は今後も生産増が見込めることから、大ガスの現地でのシェール開発部門をサビンに統合する。米国事業の柱の一つに育てたい考え。
大ガスでは、米国のガス価格は化学品の原料としての需要のほか、パイプラインを通じたメキシコへの販売やLNG転換による海外輸出がけん引して、上昇傾向が続くと分析している。
これまで海外のシェール開発プロジェクトはエネルギー会社や商社が権益の一部に出資し、ガスを受け取るビジネスモデルが一般的だった。当初の想定よりも生産量が上向かない、採掘にかかるコストが上昇するといった原因で減損のリスクを伴うためだ。大ガスでも14年3月期に米国のピアソール・シェールガス・オイル開発プロジェクトで減損処理し、約290億円を特別損失に計上した。18年3月期にもパプアニューギニアなどのプロジェクトで約100億円の損失が出た。
今回のサビンの事業は18年からすでに開発に参画した実績があり、「資産の優良性を確認できる期間が確保できた」(大ガス)としている。全株式の取得で自社の戦略に応じた開発計画を立てられ、他の資産の売却情報にも接しやすくなるという。日本企業が主体となって開発する事例は珍しいことから、生産性を見極める高い管理ノウハウが求められる。
大ガスが海外事業に軸足を移す背景には、国内ガス事業の厳しさがある。29日に発表した19年4~6月期連結決算は純利益が前年同期比83%増の286億円だったが、小売り全面自由化による競争激化から、ガス販売量は4%減少した。
海外事業はシェールガスの権益取得のほか、火力発電所への出資や輸入するLNGを第三者に転売するといったビジネスモデルがある。国内依存度の強いエネルギー会社が海外でどれだけ稼ぐ力を持てるか。大ガスの米国事業はその試金石となる。