原油の陸上輸送4割増、サウジ検討 ホルムズ迂回へ

2019/7/29 18:04
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ホルムズ海峡で緊張が高まり、産油国は迂回ルートの確保に動いている=ロイター

ホルムズ海峡で緊張が高まり、産油国は迂回ルートの確保に動いている=ロイター

【カイロ=飛田雅則】サウジアラビアは東部の油田地帯から原油を西部の紅海沿岸へ運ぶパイプラインの能力を4割拡大させる検討を始めた。イランとの緊張が高まり、東部に面するペルシャ湾の海上輸送を使った原油輸出が滞る可能性が強まったためだ。陸上ルート活用で、同湾と外海をつなぐホルムズ海峡を迂回する。だが東部は反政府勢力が拠点を置き、パイプラインは武力攻撃を受けやすい。送油ルート修正が実現するかどうか、なお曲折はありそうだ。

世界最大級の産油国であるサウジの油田は東部州に集中する。この地域と紅海沿岸を結ぶ1ルートのパイプラインが稼働しているが、日量500万バレルの最大輸送能力のうち約4割しか活用していない。

ロイター通信によると、サウジのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は25日、パイプラインを通じた原油輸送について「必要ならば最大能力まで輸送を増やす」と指摘した。さらに「拡張工事で輸送能力を日量700万バレルに引き上げたい」とも述べた。同国の原油輸出量は直近で日量680万バレル強とみられ、パイプラインを計画通りに拡張すれば全量を陸上で運べることになる。

課題はサウジ領内でも陸上のパイプラインが常に武力攻撃を受けるリスクにさらされていることだ。

サウジの人口の10~15%はイスラム教シーア派で、同スンニ派の戒律を厳格に尊ぶ王室と対立する。シーア派の多くは東部州で暮らす。シーア派は油田の利益が東部より王室に厚く配分される現状に不満で、しばしば反乱を起こしてきた。その背後にはシーア派法学者が指導するイランの支援があるとサウジはみる。

AFP通信によると、サウジでは4月、テロに関与した罪で37人が処刑された。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、このうち11人はイランのスパイとされ、少なくとも14人は2011~12年に東部州で起きた反政府運動に関わったと断定された。サウジは16年1月、高名なシーア派法学者を処刑し、抗議したイランとの断交につながった。

19年5月にはサウジの東西を結ぶパイプラインの2カ所を、イランが支援するイエメンのシーア派武装組織「フーシ」がドローン(無人機)で攻撃した。

こうした危険があるためサウジはパイプラインの利用を輸送能力の約4割に抑えてきた。サウジは国軍の総兵力に近い約10万人の国家警備隊を組織し、油田など重要施設を警備する。ファリハ氏の方針通りにパイプラインの利用を増やせば、警備隊員の増員などでコストがかさむ。パイプラインの能力拡大には「2年はかかる」(同氏)ため、当面は輸送ルートを大きくは修正できないもようだ。

ほかの湾岸産油国もホルムズ海峡を通らない輸出を模索する。アラブ首長国連邦(UAE)は12年に運用を始めた、同国アブダビの油田とオマーン湾の積み出し港フジャイラを結ぶパイプライン(輸送能力は日量150万バレル)を積極活用する構えだ。

ペルシャ湾に面するクウェートとカタールは19年5月、近隣のイラクに同国北部キルクークからトルコに至るパイプラインの利用を打診した。イラクのアブドルマハディ首相は「輸送は可能だ」と応じた。

アブドルマハディ氏も7月上旬「(イラクは)ホルムズ海峡を迂回してシリアやヨルダンに原油を輸出するルートを考えている」と語った。イラクは同国の油田とヨルダンの紅海沿岸を結ぶパイプラインの建設で合意した。シリア内戦で中断した同国へのパイプラインの建設計画の再開も視野に入れる。

ホルムズ海峡は合計で日量約1700万バレルの原油や石油製品がタンカーで通過する世界へのエネルギー供給の大動脈だ。

同海峡でイラン革命防衛隊は7月19日、英タンカーを拿捕(だほ)した。米国は海峡航行の安全確保のため、各国に軍の艦船の派遣を要請している。イランは、この「有志連合」の結成を、米国と同盟国による軍事圧力とみなし反対している。

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