仏デジタル課税、深まる米欧通商の溝 米は報復示唆

2019/7/28 20:05
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【ワシントン=鳳山太成】トランプ米政権が欧州連合(EU)へ通商問題を巡って圧力を強めている。トランプ米大統領はフランスが導入したIT(情報技術)企業へのデジタルサービス税への報復として、仏産ワインへの追加関税を示唆。1年以上にらみ合いが続く米欧通商協議の打開へ、EU最大の農業国の仏を揺さぶる狙いがにじむ。農業や自動車など広い分野で貿易問題を抱える米欧の対立が激化すれば世界経済のさらなる重荷となりかねない。

デジタル課税を巡って対立を深めるトランプ米大統領(右)とマクロン仏大統領(左)=AP

デジタル課税を巡って対立を深めるトランプ米大統領(右)とマクロン仏大統領(左)=AP

「マクロン(仏大統領)の愚行に対する甚大な報復措置を速やかに発表する」。トランプ氏は26日、仏のデジタルサービス税の導入決定を受けてすぐさま不満を爆発させた。「フランスのワインに関税をかけるかもしれない」とも踏み込んだ。仏政府は25日、デジタルサービスの課税法を官報に掲載して公布した。

米通商代表部(USTR)は中国への制裁関税発動にも使った「通商法301条」を使って調査を進める。8月中旬の公聴会など行政手続きが残っており即座に報復できるわけではないが、経済協力開発機構(OECD)を中心に国際社会がデジタル課税を巡って2020年の合意をめざす中で、仏の抜け駆けを前に圧力を強めている。

米議会もトランプ政権の強硬姿勢を支持する。与野党幹部は6月、税法の規定を使い、フランス人や仏企業への税金を2倍に引き上げるよう財務省に提案した。欧州市場でもグーグルやフェイスブックなど米企業が高いシェアを握っており、仏デジタルサービス税が「(米企業への)新たな貿易障壁」(グラスリー上院財政委員長)と映る。

ただ仏との対立はデジタル課税を巡る摩擦にとどまらない。トランプ政権は「安全保障上の脅威」を理由に、EUからの輸入自動車への追加関税を検討しており、11月までに発動の是非を判断する見通し。米欧は18年夏に新たな通商交渉を始めることで合意し、交渉中は追加関税を棚上げすることで合意したが、1年以上たってもなお、交渉を始められていない。

交渉入りの障害となっているのが、農産品を交渉の対象に含めるかどうかだ。市場開放を求める米国に対し、欧州側は農業大国の仏が強硬に反対し、EUは農産品について「交渉せず」との姿勢を崩していない。

「仏政府を揺さぶり、通商協議の行き詰まりを打開しようと狙っている」(欧州外交筋)。仏デジタルサービス税に報復をちらつかせるトランプ政権の姿勢に、欧州側は警戒を強めている。

米仏の対立が激化すれば、イラン問題など外交問題への対応を含む国際協調にもきしみが生じかねない。仏は8月下旬に開く主要7カ国(G7)首脳会議の議長国だ。18年は議長国を務めたカナダと首脳会議直前に鉄鋼・アルミ関税や北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を巡って対立。トランプ氏はツイッターで首脳宣言を承認しないと会議後に突如表明した。

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