フードテックで食品ロス削減 魚や野菜、長く保存

2019/7/29 0:00
保存
共有
印刷
その他

腐敗を抑える「エイジングシート」に包まれた本マグロ(川崎市の川崎北部市場)

腐敗を抑える「エイジングシート」に包まれた本マグロ(川崎市の川崎北部市場)

食品にかかわる課題を技術で解決しようとする「フードテック」企業にとり、食品ロス削減の機運は商機だ。ミートエポック(川崎市)が特殊なカビでマグロの鮮度を維持したり、アイル(長崎県平戸市)が野菜を乾燥シートにして2年持たせたりと工夫が相次ぐ。米国では上場するフードテック企業もあり、世界で競争が始まっている。

肉だけでなく魚も熟成

川崎市の魚市場、川崎北部市場。1週間以上も前に水揚げされた本マグロが冷蔵室に並んでいる。「腐敗しないどころか、うまみが増す」。水産卸、泉力(東京・中央)の中岡康祐代表社員は、ミートエポックが開発した「エイジングシート」についてこう話す。

シートには人体に無害の毛カビの胞子が付着し、熟成を通常より3倍速める。同時に、腐らせる原因となる菌の侵入を防ぐため、捨てる無駄もはぶける。泉力は魚にシートを巻いて、3週間ほど寝かせ、高級スーパーや飲食店に卸している。

ミートエポックは肉や魚の熟成用としてシートを販売している。年内にも保存用を発売する。跡部美樹雄社長は「たとえば、すし屋が1日で捨てていた魚や貝をシートで包めば1週間程度は使えるだろう」と話す。

生産を2倍に

フードテック分野は肉から魚、さらに野菜へ広がってきた。アイルの「ベジート」はのりの生産技術を応用してつくる。大根やニンジン、ホウレンソウなど5種類あり、具材をベジートで包む春巻きなど利用法は様々。同社が考案しているレシピは200を超す。

イトーヨーカドーが18年に扱い始めた。8月から従来の2倍の1日3万枚を製造する。早田圭介社長は「規格外の野菜の多くは捨てられてしまう。ベジート用に使えば生産者の収入も増える」と話す。現在、さらに25品を試作中だという。

フードテックは食べ物を無駄にしない「長持ちの技術」だけではない。世界の食料需要の増加をみすえ、人工的に肉をつくるビジネスを目指す企業の一つが、細胞培養技術を持つインテグリカルチャー(東京・新宿)。羽生雄毅社長は「20年代前半にも販売をめざす」と話す。まずはガチョウの肝臓細胞を培養し、フォアグラをつくる。

課題である生産コストを抑えるため日本ハムと研究を始める計画だ。インテグリ独自の細胞培養システムを活用。日本ハムから肉製品の製造ノウハウを提供してもらう。安定して製造できる基盤技術の開発を急ぐ。

フードテック企業は世界で急速に注目を集め始めている。大豆などでパティやソーセージを作る米ビヨンド・ミートは5月、ナスダック市場に上場した。直近の株価は初日終値の3倍に及ぶ。

2016年、高級スーパー「ホールフーズ・マーケット」でパティなどの販売を始めた。世界の人口増加を背景にして、新たなたんぱく質を提供する事業の将来性を期待されている。

米国では上場する企業も

フードテックは技術開発の段階からビジネスの競争に進んでいる。米インポッシブル・フーズは4月、米バーガーキングと協業して人工肉を使うハンバーガーを販売すると発表した。

市場はグローバルに広がるとみて各地で新興企業が生まれている。イスラエルのアレフ・ファームも人工肉の商品化を目指している。オランダでも開発が進む。

コンサルティング会社シグマクシスの田中宏隆氏は「米国のフードテック系ベンチャーキャピタルは200社に増えた」と話す。日本でも、けん引役の新興企業などへの投資が増えるとみる。

(平嶋健人、潟山美穂)

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]