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元五輪ランナー、サニブラウンの「初めての指導者」に
陸上短距離 大森盛一(2)

Tokyo2020
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2019/7/31 5:30
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主宰する陸上クラブでは、子どもたちが大森盛一の周りに集まる(東京都世田谷区の日大グラウンド)

主宰する陸上クラブでは、子どもたちが大森盛一の周りに集まる(東京都世田谷区の日大グラウンド)

1996年アトランタ五輪の陸上1600メートル(通称マイル)リレーで今も破られない日本記録をアンカーとして樹立し、5位入賞を果たした大森盛一(47)は引退後、陸上から離れた。ディズニーのキャストや宅配業など様々な職業に就いたが、400メートルトラックを1周するかのように陸上界に戻ってくる。今回は指導者になるまでの軌跡と、突出した才能に出会う奇跡をたどる。前回は(「23年残るリレー日本記録 アンカーは再び夢舞台めざす」

◇   ◇   ◇

大森盛一は、無酸素運動として過酷さを極める陸上400メートル走には「もう戻らない」と決心してトラックを離れた。そうして始まった人生というレースに酸素はあったが、スタートから苦しい展開となっていた。

陸上での評価、人脈とはあえて無関係な仕事にチャレンジしたいと考え、最初に選んだのはディズニーのキャストだ。記録や結果ではなく、言葉やコミュニケーションで人を感動させる充実感を初めて味わう。夢の世界を出て、次は一日中運転し、黙々と荷物の集配を繰り返す宅配業を選ぶ。5年が過ぎて宅配業を退社し、知人に紹介された生命保険の営業の仕事に就く。

■寡黙なランナー、営業マンになる

どれも違う職種に見えて、不思議な共通点がある。かつて、雄弁に競技や自身を語らなかった寡黙なランナーが「陸上とは無関係の世界」を求めて就く職業はなぜか、接客を基本とする点で同じだった。人とコミュニケーションを取り、何かを伝える。それが苦手だから、無酸素の世界で生きようとした面もあっただろう。そうだとすれば本当は陸上を離れたのではなく、陸上界に指導者で戻る日のために、絶対に必要な基礎とスタイルを築くための時間だったのかもしれない。

生命保険の営業も、それを専門にしてきたプロたちにはなかなか追い付けず業績も上がらない。この時期がもっとも厳しかったと振り返る。

「宅配業の時にも、ウチのほうが安く荷物を運びます、と他の会社と競争するための営業は経験していましたが、保険はまた違いましたね。引退して6年がたち、この頃が苦しい時期でした。家族もいましたのでとにかく仕事を探し、家族の知人が産業用の機器を製造する会社で営業を担当しては?と機会を与えてくれたんです」

年間数十億円を売り上げる安定した中小企業で、営業の仕事そのものは順調だった。しかし2008年秋、今度は「リーマン・ショック」に見舞われ、会社は人員削減を余儀なくされる。「トラックを離れた」と思っていた五輪選手が、実は依然400メートルトラックでもがき、走り続けていたのだと知ったのは、どん底に見えたこの時期だった。

3つめの職業となった生命保険会社に勤めた07年ごろ、その経歴を知った顧客に「ちょっと見てもらえないか」と、東京・北区にあるトラッククラブ「AC・KITA」を教えられた。1990年創立の伝統あるクラブには、当時すでに身体障害者も健常者も一緒に陸上を楽しむ、先進的な気風が浸透していた。ここで、女子パラ陸上で100メートルを走っていた高田千明(34=ほけんの窓口)と初めて出会う。

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