2019年9月16日(月)

インテル、スマホ半導体事業に終止符 アップルに売却

2019/7/26 11:39
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【シリコンバレー=佐藤浩実】米インテルは25日、「モデムチップ」と呼ばれるスマートフォン向けの通信半導体の事業を10億ドル(約1100億円)で米アップルに売却すると発表した。同事業に携わる従業員と知的財産はアップルへ移る。インテルはドイツ企業からの買収で参入した同事業に8年あまりで終止符を打つ。得意のサーバー分野などに投資を振り向ける考えだが、スマホなしでどこまで成長を描けるかが課題となる。

インテルはスマホの通信半導体事業をアップルに10億ドルで売却する(米シリコンバレーの本社)

「アップルが才能あるチームに適切な環境を用意し、資産を生かしてくれると確信している」。インテルのボブ・スワン最高経営責任者(CEO)は25日、モデムチップ事業の売却についてこう語った。

2019年10~12月をめどに、エンジニアを中心とする2200人の従業員とモデムチップの設計技術などを含む知財をアップルに譲渡する。売却手続きが完了すれば、スマホに関わる主立った事業はインテルから消える。

インテルがモデムチップ事業に本格的に参入したのは11年。当時のポール・オッテリーニCEOは出遅れていたスマホ市場で挽回するために、独インフィニオンテクノロジーズから14億ドル(当時の為替レートで約1200億円)で事業を買収した。

顧客開拓には苦労したが、高額な特許使用料を求める米クアルコムへの依存率を下げたかったアップルと思惑が合致。インテルは16年の発売の「iPhone7」でクアルコムと並んで供給元の1社となり、18年発売「XS」など3機種では独占供給にこぎつけた。

ただ、インフィニオンから買収した11年の時点で同事業は赤字だったもよう。18年に215億ドル規模だったモデムチップの市場でインテルのシェアは8%(米ストラテジー・アナリティクス調べ)まで上昇したものの、5割近いクアルコムの背中は遠い。13%強の台湾メディアテックや中国・華為技術(ファーウェイ)傘下のハイシリコンにも及ばなかった。高速通信規格「5G」への対応など開発投資がかさむばかりで、収益化には苦労していた。

そこに飛び込んできたのが、17年から法廷係争を続けていたアップルとクアルコムの電撃和解のニュースだ。今年4月、両社が和解を発表した数時間後にインテルは5G対応モデムチップの開発中断を表明。「将来の収益を見通せない」(スワン氏)と、8年間に及ぶスマホの通信をめぐる戦いの舞台から降りることを決めた。

実はこの決断の背景には、インテルの経営陣の顔ぶれの変化がある。同社では18年6月に、売り上げの拡大思考が強かったブライアン・クルザニッチ最高経営責任者(CEO、当時)が従業員との不適切な関係を理由に辞任。その後を継いだボブ・スワン氏はもともと最高財務責任者(CFO)で、稼ぎ頭であるパソコンやサーバー向けCPUの足を引っ張るモデムチップ事業の低迷を苦々しく思っていた。

さらにスワン氏は4月初旬、半導体装置メーカーのアプライドマテリアルズ在籍時の同僚でクアルコムのCFOをしていたジョージ・デービス氏をインテルの新たなCFOとして迎えた。2人を知る米半導体企業の幹部は「通信半導体におけるインテルとクアルコムの実力差を理解した2人に、事業を続ける選択肢はなかっただろう」と見る。アップルとクアルコムの和解に合わせた撤退表明は「皆を納得させるためのエクスキューズ(言い訳)だ」と指摘する。

アップルへの事業売却を公表した25日、スワン氏は「インテルが挑むべき市場だけで3000億ドルの規模がある」と強調した。サーバーやパソコンでそれぞれ9割を超えるCPUのシェアで築いた顧客基盤を生かし、人工知能(AI)計算用に特化したチップやGPU(画像処理半導体)などに注力するとの意思表明だ。データセンターや自動運転車などで使うチップを通じて5G時代の商機をつかむという。

もっとも、成熟期を迎えたとはいえ年15億台の規模で世界の隅々に普及している半導体の搭載機器はスマホのほかにない。アップルへの事業売却は「完璧に理にかなう」(半導体業界に詳しいアナリストのパトリック・ムーアヘッド氏)と評価され、発表後には時間外取引の株価も急騰した。ただスワン氏が口にした「3000億ドルの市場」には米エヌビディアや米ザイリンクスなど競合もひしめく。インテルがスマホなき世界で成長する姿を見せられなければ、評価は一変するだろう。

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