トルコ中銀、4.25%利下げ 背後に政治圧力
インフレに落ち着き 景気刺激狙う
【イスタンブール=木寺もも子】トルコ中央銀行は25日開いた金融政策決定会合で、主要な政策金利の1週間物レポ金利を4.25%引き下げ、19.75%とすることを決めた。政策金利を下げるのは約3年ぶり。足元でインフレが和らぐなど緩和に転じる環境が整いつつあった。だが市場予想を超える急激な下げ幅となった背景には、景気浮揚を狙うエルドアン大統領政権の圧力がある。中銀の独立性への信頼はさらに揺らぎそうだ。

中銀は声明で「物価上昇率の見通しは改善を続けている」などと理由を説明した。2018年夏、対米関係の悪化を受けて起きた通貨危機「トルコショック」で一時、前年同月比25%を超えたインフレ率は6月、15.7%まで低下した。
一方で通貨防衛のために政策金利が24%まで引き上げられたことで経済活動は冷え込み、国内総生産(GDP)は19年1~3月期まで前年同期比で2四半期連続で減少していた。
外部環境をみれば、米連邦準備理事会(FRB)による利下げ見込みが強まっていることで、トルコが利下げをしても再び資本流出が起きるリスクは減っている。中銀が景気刺激のため利下げに動く条件は整いつつあったといえる。
だが市場予想の2.5%を大きく超える下げ幅には、政治的な圧力が働いたとの見方が強い。金利を悪と断じるエルドアン大統領は中銀に対して再三、利下げを求める発言を繰り返していた。7月6日には6会合連続で金利を据え置いていたチェティンカヤ前総裁を任期途中で更迭した。
エルドアン氏は更迭の理由について記者団に「金融政策で我々の指示に従わなかったため代えざるを得なかった」と述べた。ロイター通信によると、政権はチェティンカヤ氏に6月の決定会合で3%の利下げをするよう要求していたとされる。
中銀はウイサル新総裁のもと、さらなる利下げを模索する可能性もある。大手証券会社のイシュ・インベストメントは前総裁の更迭後、1週間物レポ金利は17%まで下がるとの予想を出した。
リラは25日の利下げ発表直後、対ドルで一時、前日比1%下げたが、その後の値動きは小幅に推移している。TEBアセット・マネジメントのプナル・ウールオール氏は「市場は既に4%までの利下げは織り込んでいた」とみている。
中銀への信認低下はリラの中長期的な通貨価値を損ないかねない。みずほ銀行欧州資金部の本多秀俊シニア為替ストラテジストは「中銀の独立性が低いと見なされるなか、割安という理由では真剣な投資マネーはもはやトルコには来ない」と指摘する。