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北朝鮮で見たスポーツの現場 強くなりたい情熱は同じ

国際体操連盟会長・渡辺守成さん(5=最終回)

国際体操連盟(FIG)の会長で、日本人唯一の国際オリンピック委員会(IOC)委員でもある渡辺守成さん(60)の半生をたどる連載。2020年東京五輪の準備に忙殺されるなかでも、視線はその先にある。最終回は「スポーツで世界を変える」という信念について語ってもらった。

◇   ◇   ◇

 17年、FIGの会長に就任した。いま取り組んでいるのが、審判を補助する自動採点システムの導入だ。20年の東京大会はその試金石となる。

自動採点は、FIGの会長選挙で私が各国から支持を集めた公約でもあります。レーザーによるセンシング技術とAI(人工知能)を使い、選手の回転やひねり、技の美しさを正確に見極めることを目指しています。

体操に限らず採点競技は、審判のミスによって後味が悪くなることがあります。それではスポーツの感動が台無しです。IOCも、公正さを飛躍的に高める試みとして注目しています。

将来は様々な競技のトレーニングに導入されるでしょう。一般の用途に広がれば、姿勢や歩き方のチェックなどで高齢者の健康増進にも役立ちます。スポーツを媒介に、新しいビジネスにつながるイノベーションが起きると確信しています。

 国際競技団体会長の枠で、18年にはIOCの委員にも就いた。日本オリンピック委員会(JOC)会長だった竹田恒和氏の辞任により、日本出身で唯一の委員となった。20年の東京五輪では大きな責務を負う。

IOCは国際ボクシング協会について不明朗な組織運営などを理由に、資格停止処分の方針を5月に決めました。このままでは東京五輪で、ボクシング競技を実施できません。その日、IOCのトーマス・バッハ会長から電話がありました。「ボクシングの状況は知っているな。東京五輪まで運営を君に任せる」。突然の指令でした。

私は日本のサラリーマンです。「辞令」が出ればそれに従い、ミッションに全力を尽くします。東京大会では国際ボクシング協会にかわって、実施種目の選定から公正な採点の実現まで、責任を持って運営します。

6月のIOC総会では全委員に宣言しました。「ボクシングの信頼を取り戻します。それはIOC、五輪、さらにはスポーツへの信頼を取り戻すことでもあります。失敗したら、私が委員でいる意味はありません」

スポーツには世界を動かし、変える力があると信じています。しかし、その力が十分に生かせているとはいえません。IOCが設立された1894年も現在も、世界のどこかで戦争が始まる危機が続いています。

18年夏にはFIG会長として北朝鮮を訪れました。各国の体操界を視察する一環で、ほかのスポーツの現場も見て回りました。改めて感じたのは、政治的に難しい問題はあっても、強くなろうと頑張っている選手たちのひたむきさは、どこの国でも同じだということでした。

「スポーツを通して心身を向上させ、文化・国籍など様々な差異を超え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解し合うことで平和でよりよい世界の実現に貢献する」。東京大会が終わった後も、近代五輪の創始者であるクーベルタン男爵が掲げたこの理念を追求し続けるつもりです。

(編集委員 北川和徳)

(終わり)

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