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ブルガリアで新体操に感激 「子供の感性育てたい」
国際体操連盟会長・渡辺守成さん(2)

2019/7/30 6:00
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国際体操連盟(FIG)の会長で、日本人唯一の国際オリンピック委員会(IOC)委員でもある渡辺守成さん(60)の半生をたどる連載。体操選手として大学に進んだものの、競技の実績はほとんど残せなかった。2回目は、大きな転機となったブルガリア留学について語ってもらった。

◇   ◇   ◇

 体操選手として東海大に進んだが、そのキャリアは在学中に終わる。喪失感を抱きながら決めたブルガリアへの留学が人生の転機になった。

入学してまもなく、母ががんを患いました。高額な治療費がかかるため中退して実家に戻ろうと思いましたが、母から許してもらえず、アルバイトをしながら学校に通い、体操部はやめることにしました。

ブルガリアの新体操ヘッドコーチであるネシュカ・ロベバさん(右)と渡辺さん(中)

ブルガリアの新体操ヘッドコーチであるネシュカ・ロベバさん(右)と渡辺さん(中)

バイトに追われていたころ、大学の掲示板で見つけたのが交換留学生の募集です。現地での学費は不要で、奨学金まで出ます。最も条件がよかったブルガリアの国立体育大に応募して合格しました。

昼夜のバイトで、片道の旅費を稼ぎました。船便でソ連のナホトカに行き、そこから鉄道でモスクワを経由してブルガリアのソフィアまで。3等席で、ほとんど飲まず食わずの2週間です。駅からどうやって大学まで着いたのか記憶がないくらい、緊張し憔悴(しょうすい)した人生初の渡航でした。

現地ではバイトの必要もなく快適でした。ダルベニッツアという留学生の街の寮に住みました。2人の相部屋で、アフリカや中米、中国、北朝鮮など様々な国の若者と交流できました。

ブルガリアは当時、社会主義各国から多くの留学生を受け入れていました。今の私が人種や宗教、言語などの隔たりを感じず、どこの国の人ともすぐに打ち解けられるのは、このときの経験のおかげだと思います。

 ブルガリアで出合った新体操に魅了され、日本でそれを普及させることが人生の大きなテーマになった。

留学して最初の半年間は語学研修があるのですが、私はかわりに、体操の練習場に出入りして選手と接することで言葉を学ぼうと考えました。そんなとき体操だけでなく新体操の練習も見に来るよう、ブルガリアのヘッドコーチ、ネシュカ・ロベバさんから誘われたのです。

新体操王国のブルガリアで、ネシュカさんは映画にもなるような英雄的な存在です。彼女が私のために演技会を開いてくれました。鳥肌が立ったのを覚えています。18歳くらいの少女がピアノの生演奏に合わせて見事に喜怒哀楽を表現し、見ていて涙があふれてきました。あの衝撃は今でも忘れられません。

その場でネシュカさんに師事を願い出ました。彼女は新体操を選手に教える前に本を読ませ、芸術から哲学まで学ばせます。だから選手は内面からわき出る感情表現によって観客を感動させられるというのです。

これほど優れた感性を持つ人間が育つのであれば、人類にとって素晴らしいことではないかと考えました。ネシュカさんの指導を学んでいるうちに、ブルガリア留学は当初の1年間の予定が2年半に延びました。

日本に帰国して東海大の卒業と就職が近づいても、新体操の魅力が頭から離れませんでした。感性のあふれた子どもたちを日本でも育てられないか。街角を曲がれば、小さな女の子がフープで遊んでいる。ブルガリアで見た、そんな光景を追い求めるようになっていました。

(編集委員 北川和徳)

 渡辺守成さんの半生を5回に分けて連載します。
(1)サラリーマンからIOC委員に 「スポーツで世界変える」
(3)「新体操教室開きたい」 企画書片手にジャスコに入社
(4)「一番若いから?」 メダルゼロ体操界、改革託される
(5)北朝鮮で見たスポーツの現場 強くなりたい情熱は同じ

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