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代表強化のその先へ リーグ間競争に生き残るには
FIFAコンサルタント 杉原海太

(2/2ページ)
2019/7/24 5:30
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こういう立場に置かれているのはJリーグだけではない。欧州にあってもオランダやベルギーは五大リーグに吸い込まれる側だ。ベルギーもオランダも強い代表チームを持つけれど、主力選手は自国のリーグにいない。昨季、オランダのアヤックスが欧州チャンピオンズリーグの準決勝まで進む一大旋風を巻き起こしたが、案の定、オフになると主力選手は次々と他国のビッグクラブに移籍していった。

アヤックスで活躍したDFデ・リフトも来季はユベントスでプレーする=ロイター

アヤックスで活躍したDFデ・リフトも来季はユベントスでプレーする=ロイター

こうした状況を踏まえて、私が思うのは、リーグは代表強化のためにあるという「常識」を立ち止まって疑ってみるということである。Jクラブのアカデミー(養成機関)が金の卵のゆりかごであることは全面的に肯定するし、今後もそうあるべきだ。が、現役の代表選手や未来の代表選手になるタレントがどんどん流出していく状況では、代表強化につながる選手の鍛錬は欧州のリーグやクラブがある意味、肩代わりしてやってくれるわけだから、リーグ間の厳しい国際競争に生き残るためには、Jリーグは選手の流出を補填するような「常識」にとらわれない抜本的な制度改革を行い、自らの魅力をもっと高めることを考えてみてもよいのではないだろうか。

地域密着とグローバル化を両立

Jリーグの成功は、実業団リーグだった日本サッカーリーグを、企業内スポーツから地域を巻き込んだクラブスポーツに転換させたことにあるとよく語られる。「地域密着」はJリーグが草創期に掲げた理念で、これを全国津々浦々に浸透させるためにクラブ数の拡大政策を採ってきた。理念の普及という観点に立てば、拡大政策は素晴らしいことなのだが、トップレベルの選手が流出する一方でクラブ数を増やせば、エンターテインメントとしてのコンテンツ価値を維持するのは至難の業だろう。

日本のプロ野球(NPB)は野茂英雄さんが米大リーグ(MLB)に挑戦するまで、移籍のルールにグローバル化の視点など1ミリもない立て付けになっていた。Jリーグはそれに比べれば、国際間移籍を前提にしたルールを最初から持っていたが、今のような国際的な人材の急激な流動化を想定していたわけではなかった。

それでもNPBはサッカーに比べると、有利な立場にある。MLB以外に強力な競争相手がいないから、MLBを念頭に2番手戦略をしっかり打てれば、国際競争に伍(ご)していける可能性は十分にあると思う。

サッカーは難しい。グローバル化の流れの中でJリーグと競合するリーグは世界中にたくさんある。リーグの価値は放送権料の値付けではっきりと可視化される。そういう状況の下で存在感を示すには、かなりメーターの振り切れた、グローバル化を前提にした戦略が必要に思えるし、これは地域密着というJリーグの理念と両立し得るものだと思う(実際に欧州の様々なクラブは「ローカル性」と「国際性」を両立していると感じる)。

バスケットボールのBリーグや、W杯開催を契機にさらなる成長が期待されるラグビーのトップリーグも同じことがいえる。昇降格をどうするといった内輪の話も大事だが、グローバル化を前提に、いろいろなものを設計していかないと激しいリーグ間競争に勝ち残れないだろう。

実は、その点で私は、親会社に国際的な企業が居並ぶ日本のラグビーは、かなりの潜在能力があるとにらんでいる。日本でプレーしたいと思う外国の選手を吸い寄せ、国際的なリーグ間競争に勝てるポテンシャルがあるのではないかと。素晴らしい外国籍の選手が集まるようになれば、日本の選手も自国にとどまってプレーするようになるだろう。

そのためには今、自分たちがどの階層にいて、その階層よりさらに上へいくには何が必要かを十分に意識して制度設計し、親会社の力を引き出す必要がある。

リーグ間競争を一番敏感に感じているのは実は選手たちだろう。どの階層でプレーするのが自分の夢や目的の実現にかなうのか。アスリートはそこを本能的にかぎつけ、よりいいリーグを目指すものだ。そういう越境をいとわないアスリートの本能に訴えかける立て付けが、これからのリーグには必要だろう。

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