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代表強化のその先へ リーグ間競争に生き残るには
FIFAコンサルタント 杉原海太

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2019/7/24 5:30
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スポーツの世界では、強い代表チームと人気のある国内リーグは「クルマの両輪」によくなぞらえられる。至極まっとうなロジックなのだが、グローバル化の波は時にそういう常識にも揺さぶりをかける。日本のスポーツ界も例外ではないように思う。

1993年に本邦初のプロサッカーリーグとしてJリーグが発足したころ、日本代表選手は全員がJリーガーだった。Jリーグを盛んにして中身を充実させることは日本代表(選手)の強化に直結したわけである。強くなった日本代表がワールドカップ(W杯)やオリンピックのような国際舞台で活躍すれば、代表人気はJリーグにも還元される。平成の時代、日本サッカーが急成長を遂げられたのは、そういう好循環を回せたからだった。

6月のエルサルバドル戦に向けた公式練習で、ランニングする日本イレブン。Jリーガーは少数派だ=共同

6月のエルサルバドル戦に向けた公式練習で、ランニングする日本イレブン。Jリーガーは少数派だ=共同

現在はどうだろうか。日本代表選手の大半は欧州各国のリーグでプレーしている。昨年のW杯ロシア大会、初戦のコロンビア戦で、先発のピッチに立ったJリーガーは昌子源(当時鹿島)だけだった。その昌子も今はフランスのトゥールーズ所属だ。このままいくと早晩、日本代表を構成する選手は全員が海外組という時代がやって来るのだろう。

こうした事態が国際環境の激変によってもたらされたことは論をまたない。大きな転換点が、95年12月に欧州司法裁判所がベルギー人のジャン・マルク・ボスマンというプロ選手の主張を全面的に認めた、いわゆる「ボスマン判決」だった。この結果、ヨーロッパ連合(EU)の労働規約がプロサッカー選手にも適用され、またクラブとの契約が満了した選手は自由に移籍できることとなった。

これ以降、EU加盟国の国籍を持つ者は外国籍選手としてカウントされなくなり、EU域内のサッカークラブで人材の流動化と多国籍化が加速し、自国の選手より外国籍選手の方が多いというチームの在り方も当たり前になった。一般社会のグローバル化と同じで、富める者はより富み、世界は差し出す側と受け取る側に分割されるようになった。英プレミアリーグ、スペイン、ドイツ、イタリア、フランスの五大リーグは世界中の優秀なプレーヤーをどんどん吸い込んで、クラブやリーグの階層化が国際的に猛スピードで進んだわけである。

選手の流出、Jリーグにはダメージ

93年にJリーグを用意していた日本は、一足先にプロリーグをスタートさせていた韓国とともに、このグローバル化の波に人材供給源として何とか対応できた。それがアジアで強国の地位を築かせたといってもいいくらいだろう。選手の国際間移籍はどんどん低年齢化し、青田買いが進んでいるが、日本も例外ではない。FC東京の久保建英が18歳でレアル・マドリードへ、20歳の安部裕葵が鹿島からFCバルセロナへ移籍したのは象徴的な例といえる。

Jリーグで十分に実績を積んでから海外挑戦するのではなく、Jリーグをほぼスキップして十代のうちにいきなり外国のクラブにスカウトされる。もし、久保が欧州で活躍するようなことがあれば、このような例はこれからさらに増えるのだろう。こうなると、代表チームの強化に役立っているのは自国のリーグというより、実質的に欧州のリーグやクラブということになり、JリーグやJクラブは金の卵を孵化(ふか)させる養成機関としての顔がさらに強まることになる。

それはそれで日本の選手育成力が世界的に認められた証しになるから胸を張っていいのだが、Jリーグのエンターテインメントとしての価値にはボディーブローのようなダメージを与え続けることになる。現役の日本代表及び未来の日本代表といえるタレントがどんどん自国の外に流出していくのだから。

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