2019年9月23日(月)

「レベル4」は北の国から 自動運転のカギは地方に

2019/7/23 11:14
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商用車世界大手のボルボ(スウェーデン)傘下のUDトラックスは、日本通運などと組み自動運転「レベル4」の実証実験を8月に北海道で始める。大型トラックを用い、農作物の輸送ルートで実験を実施。トラックを使ったレベル4の実験は国内初。北海道で広大な地がレベル4を試す場として選ばれた。海外の動きとくらべると自動運転は遅れがちな日本。挽回のカギは地方にあるかもしれない。

北海道で国内初となるトラックを使うレベル4の実証実験を実施する

実証実験はUD、日通、ホクレン農業協同組合連合会(札幌市)と共同で8月に行う。ホクレンが北海道斜里町に持つ製糖工場の入り口から加工ラインまでの約1.3キロメートルを自動運転のトラックが走行。実験では安全のために自動運転の訓練を受けたUDのプロドライバーが運転席に座り、走行中は他の車両や人が交ざらないよう道は封鎖して時速30キロメートルで走る。

今回の実験は5段階ある自動運転のレベルのうち、特定の場所など条件付きで運転手が乗らずに走る「レベル4」に相当する。国内でも日本郵便が郵便局の敷地内で自動運転車を使った輸送の実験を行うなどしているが、大型トラックでは初めてとなる。ボルボとしてもアジアでは初めてとなる。

実験を行う製糖工場では収穫されたテンサイが大量に集められた集積所から加工ラインまで人がトラックを運転して運搬していた。最盛期には何度も行き来をしており、「使われるダンプ車の需要も逼迫している。工場内の限定領域で同じルートを反復する作業の場合は自動運転が有効だ」(日通)と考えたという。

ボルボはこれまでスウェーデンの鉱山でレベル4での実験を行ったほか、ノルウェーの鉱山で試験走行をし、19年末の商業稼働へ向けて実装を進める。UDは18年12月にレベル4の自動運転の大型トラックのデモ走行を行ったが、実際に実験に使われるのは今回が初めて。デモ走行後に問い合わせもあるといい、「運ぶ物や地域、路面状況なども異なれば運送側のニーズも異なる」(UDトラックス)といい、実験を積み重ね実用化へつなげる狙いだ。

自動運転をめぐっては、次世代技術「C(つながる車)、A(自動運転)、S(シェアリング)、E(電動化)」のひとつ。世界的な自動車業界の潮流だが、日本国内の場合は「A(自動運転)」は遅れ気味だ。メーカーの技術開発ばかりでなく、ルールやインフラ整備など実用に向けた課題も多い。

米国では一部の州が公道でレベル4の無人運転試験を認めている。一方、日本は20年に高速道路でシステムに運転を任せるレベル3の実用化を目指し、5月に法改正をしたところだ。

日本の自動運転の推進役となるのは、今回の北海道をはじめとする地方が起点になる可能性が大きい。

北海道は広大な土地に加え、自動運転の試験に欠かせない積雪や寒冷な環境を売りに企業の試験を誘致している。自動車・部品メーカーなどが道内に持つ自動運転の試験場は全国最多の28カ所。

最近は稼働率が低い自動車学校や休業中のスキー場など公道以外の施設も試験場として開放している。企業が大規模な開発・生産拠点を道内に置くことを期待しており、日通の実証も支援する。

自動運転の実験フィールドとして目立つのが地方での動きだ。「ラストマイル自動運転」として、石川県輪島市、福井県永平寺町、沖縄県北谷町などで小型カートを使ったプロジェクトが進められる。中山間、短距離など自動運転の少ない好立地でデータを収集する。完成車メーカーにとどまらず、関連メーカーも参加し、地方にノウハウが集積されつつある。

もちろん、自動運転のニーズが強いからだ。過疎、高齢化により「地域の足」を維持するのが困難になっている。ドライバーの確保もままならず、インバウンド需要に沸く地域ではレジャーにも用途が広げられる。かつて地方に鉄道、バスなど交通網が整備されたが、採算難に陥っているのが実情。

課題先進国であるからこそ、それを解決するテクノロジーが見つかるはず。自動運転もそのひとつだ。最近、自動車業界で聞かれるキーワードが「スローモビリティー」。速さを追求するのでなく、高齢者や子供などに使いやすい、ゆっくりと優しいモビリティー(乗り物)だ。

スポーツカーを操り、事故をなくすのも自動運転技術。もう一つ、視野を広げれば、社会の課題をひもとく手段にもなるはずだ。今回の北海道でのチャレンジは、日本の自動運転を大きく前進させる一歩となる。(岡田江美)

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