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五輪施設なぜ税金頼み サッカーW杯の教訓生きず
ドーム社長 安田秀一

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2019/8/5 5:30
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2020年東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場(東京都新宿区)=共同

2020年東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場(東京都新宿区)=共同

東京オリパラ開催まで1年、ビッグイベントを迎える機運が高まってきました。都内ではメインスタジアムとなる新国立競技場など新たな競技施設が次々に登場しています。米スポーツブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店、ドームの本社周辺でも同様だそうです。ただ、社長の安田秀一氏は、それらの施設を複雑な思いで見ています。施設整備が日本全体の効率化を促すきっかけになると期待していたと述べています。

◇   ◇   ◇

今回は、まず勝手ながら「敗北」宣言をさせてください。

2020年東京五輪・パラリンピックまで1年を切りました。東京・有明のドーム本社周辺でも、体操やバレーボールなどの競技会場がどんどん建設されています。それらを見ながらつくづく思い知らされるのは、この大きな「建設物ファースト」の流れは、まるで変えることができなかった、という事実です。

海外にあまたある成功事例、失敗事例をもとに、「Aプランより、Bプランの方が事業性が確実」、ということが理解できれば、状況は普通に変わると思っていました。知識や情報がないだけで、誰もわかりきった損をしようとは思わないだろう、と勝手にそう思っていました。でも、毎日オフィスから見える景色、すなわち現実は、建設中の赤字を生み続ける豪華な体育館、それも2棟が並ぶという「壮観さ」です。

米国ではアリーナやスタジアムの建設に公金が投入される際は、住民投票を行うことが一般的です。その上で公債を発行して資金を調達。20~30年後にスタジアムやアリーナが生み出す経済効果が返済原資となって償還されます。つまり、経済効果がアリーナ建設の必要条件であって、一時的なイベントのための施設に公金投入は考えられません。経済効果、つまり採算が前提ですから、維持費という概念もありません。

人口は減り、国の財政状況は悪化する一方なのに、どうして「建設物ファースト」になるのでしょうか。田中角栄元首相が「日本列島改造論」を発表した時代、人口が増え続けていた半世紀前なら、住宅でも道路でもダムでもとにかく作っていけばよかったのでしょう。しかし、少子化、そしてIT化の進む現代では国全体の「効率化」が何よりも成長のカギを握るのは間違いないはずです。

■大会後、プロ野球の球場にと提案

僕は五輪・パラリンピックが日本のこうした状況を変えるきっかけになると考えて、自分なりに精いっぱいの提言をしてきました。今考えると、建設会社でもないのに、何て余計なことをしていたのだろう……とも思えてきますが、当時は義憤にかられて利害など考えずに一直線でした。

例えば、新国立競技場を「国立」とはせず、「オリンピックスタジアム」とする。そして大会後はプロ野球チームのフランチャイズに転用できるように作るべきだと国会議員をはじめとする多くの方々に提案しました。懇意の設計事務所さんの力を借りて、詳細な工程や採算性を含めた企画書を作成しました。これも1996年のアトランタ五輪の成功事例がベースで、目新しいアイデアではありません。

五輪では国際競技団体などから大勢の観客を収容できる大規模なスタジアムやアリーナを用意するよう求められます。しかし、大会が終われば過大な施設をもてあますことになります。だから、大会後はプロ野球で使う4万人規模にすることを前提に7万人収容のスタジアムを設計・建設する。7万人のスタジアムで陸上競技をすることなど五輪以外ではめったにありませんが、プロ野球の試合で4万人は適正規模です。余ってしまう3万の客席は、秩父宮ラグビー場の改築で使うこともプランに組み込んでいました。ホテルやショッピングモールも含めて神宮外苑全体を最適化する方向で計画すれば、素晴らしいものができたはずです。

世界に目を向ければ、プロリーグやプロチームなど、それを必要とする組織や地域が適正な規模のスタジアムやアリーナを整備しています。ビジネスとして成立するのが前提で、建設費も十分に賄え、そのスタジアムやアリーナを核にして地域経済を発展させる。これが欧米のスポーツビジネスで成功するための「決め技」です。

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