2019年9月19日(木)

うなぎの焼き方 大阪も今や関東風?
とことん調査隊

関西タイムライン
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2019/7/23 7:01 (2019/7/27 9:44更新)
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7月27日は土用の丑(うし)の日。うなぎの漁獲量が減り価格は高騰しているが、この日ばかりはうなぎを食べようという人は多いだろう。うなぎのかば焼きといえば、関西は腹開きで地焼き、関東は背開きで蒸してから焼くというのが定説だ。だが、大阪市内のいくつかのうなぎ店を訪れると、関東風のうなぎを提供している店舗が少なくないことに気づいた。大阪のうなぎは本当に関西風なのか。

日本経済新聞社大阪本社のある北浜周辺は、うなぎ専門店が多い。大阪証券取引所(現在の大阪取引所)のお膝元で、今も証券会社が多く集まる。「うなぎ登り」が株価上昇を連想させることから、縁起担ぎの証券マンに好まれたことなどが背景にあるようだ。

iタウンページで大阪市内の「うなぎ料理店」を調べると、全66件中、北浜を含む中央区が18件で最も多く、北区の17件が続いた。これらの店舗に関西風、関東風どちらのうなぎを提供しているか聞いたところ、回答の得られた22店のうち13店が関東風、関西風は9店だった。やはり関西風の店は減っているのだろうか。

「大阪で関東風のうなぎが増えた背景には、近鉄と阪急の動きがある」と話すのは、うなぎ店「江戸川」を運営する近鉄リテーリングの市村正人取締役だ。明治期に京都で創業した江戸川は、江戸出身の職人を雇って関東風のうなぎを提供した。近鉄グループは1962年に江戸川の経営権を得て、大阪市などに店舗を広げた。一方、江戸の老舗「竹葉亭」からのれん分けした「東京竹葉亭」や「大阪竹葉亭」が大阪に店を構えたのは、阪急電鉄の創業者、小林一三氏らが招いたのがきっかけ。鉄道会社の後押しで関東風のうなぎ店がチェーン展開し、相対的に関東風の勢力が強くなったという見立てだ。

とはいえ、個人経営の店でも関東風は少なくない。チェーン店だけが原因ではないのではと、大阪の食文化に詳しいNPO法人「浪速魚菜の会」の笹井良隆代表理事に尋ねると、「関東風のうなぎ店が増えてきたのは、昭和30年代ころから」と教えてくれた。高度成長期、東京からの来客の接待のためによく使われたのがうなぎ店で、「東京の人の口に合う、関東風のうなぎが好まれるようになった」。

一方、関西と関東で調理法が違う理由には諸説ある。大阪は商人の街なので、「腹を割って話す」ために腹開き、武士の街である江戸では切腹を連想させることを嫌って背開きになった。関東風で素焼きした後に蒸すのは、江戸っ子はしつこい味を嫌うので、蒸して脂を落とした。あるいは、せっかちな江戸っ子に素早く提供できるよう、あらかじめ下ごしらえをした……など。味は、かりっと香ばしい関西風に対し、関東風は軟らかくふっくらしているという特徴がある。

いまや少数派となってしまった関西風のうなぎを提供する柴藤(大阪市中央区)は享保年間の創業で、約300年の歴史がある。女将の柴藤滋子さんは「昔から教えられたことを受け継いできた」と話す。関西風では腹から割いたうなぎを生のまま、1匹丸ごと串に刺して焼く。「蒸してから焼くより、形を整えるのが難しい」と柴藤さん。焼いている途中に身が垂れ下がってくるので、串と串の間に追加の串を刺して形を整える。うなぎの身を崩さないよう、熟練の技が必要だ。炭火の上で何度も返し、こんがりと焼き上げる。

「うなぎに限らず、食の嗜好が変わり、軟らかいものが好まれるようになった」と笹井さん。世間では関東風のふわっと軟らかいうなぎが優勢なようだが、関西風の香ばしさや歯応えにも良さがある。大阪ならではの食文化も大切に、今年はうなぎの食べ比べをしてみてはいかがだろう。

(小国由美子)

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