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菊池VS.大谷、投打で磨き合う高度な駆け引き
スポーツライター 丹羽政善

(2/2ページ)
2019/7/22 6:30
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先程の2打席目に話を戻すと、菊池は3球目に外角低めに真っすぐを投げ、ストライクを取った。この球とくだんの6球目は、見事に同じピッチトンネルを通っている。それをホームベースの後ろと横から確認したのが次の2枚の図。これを見ると、ほぼ軌道が一致していることが分かる。

図1、菊池対大谷 7月14日、第2打席 参照:Baseball Savant.com

図1、菊池対大谷 7月14日、第2打席 参照:Baseball Savant.com

紫の点がいわゆるピッチトンネルに相当。Baseball Savant.comではコミットポイントと表現し、距離ではなく時間(ホームベースに達する0.167秒前)を基準としている。概念は同じ。黒い丸で囲んだのは、分かりやすくするため筆者が加筆。黄色のレコグニションポイントはここから紫の点の間で打者は通常、球種やストライクかボールかの判断を行っている目安を示す。

図2、菊池対大谷 7月14日、第2打席 参照:Baseball Savant.com

図2、菊池対大谷 7月14日、第2打席 参照:Baseball Savant.com

横から見ても軌道がほぼ重なっていること分かる。文中で説明したように、もしもスライダーがストライクゾーンに投じられたなら、黄色の線がもう少し上に膨らむ軌道となる。その場合、大谷は球種の判断をもっと早い段階で下し、バランスを崩すようなスイングにはならなかった可能性が高い。

神事さんにも確認してもらうと、「この図で同じトンネルに入っているといえそうです」と指摘し、続けた。「アウトコースにフォーシームが来た!と思って打ちにいったらボール球のスライダーだったのだと思います」

そう錯覚させることこそ、まさにピッチトンネルの効果なわけだが、仮にあのスライダーがストライクゾーンに投げられていたら、同じ結果にはならなかった可能性がある。

「(スライダーを)ゾーンに投げようとすると、どうしてもいったん浮いてからホームに到達してしまいますから」と神事さん。そうすると、あの3球目も生きてこない。スライダーをゾーンに投げるつもりなら、その前に高めの真っすぐを見せておく必要がある。

ちなみにそうした配球は今、菊池が磨きをかけている部分だ。真っすぐで高めに目付けをしておけば――。神事さんによると、その高めの真っすぐそのものも「スイング時間が長くなる(約0.02秒)ので、実質的に球速が速く(約5キロ)感じられる」そうだが、「低めのスライダー、チェンジアップも効く」とのことである。

適応示した菊池、次に大谷はどう対応

では、菊池はあのスライダーで仕留めるイメージをした上で逆算して3球目に真っすぐをあそこに投げたのか。あるいは、3球目が外角低めに決まったことで、6球目の配球が決まったのか。

それを聞くと菊池は、「両方ですね」と話した。「3球目が外角低めに決まったので、6球目にあそこへスライダーを投げようと思った。また、あの球を振ってもらえるような配球ができれば、とも考えていた」

そこには駆け引きの妙が透ける。

もっともこれで大谷にも情報がインプットされた。

大谷こそ、投手としてはフォーシームとスプリットでピッチトンネルを構成し、その効果を知り尽くしているのである。アスレチックス時代に対戦したエンゼルスの捕手、ジョナサン・ルクロイも「あの真っすぐとスプリットは、区別がつかない」と話していた。

かといって、あのコースに来る菊池のフォーシームとスライダーを見極めることは大谷でも難しいはずだが……。1回目の対戦を経て、菊池が適応を示した。今度は大谷がどう対応するか。2度目の対戦の前、「特に意識することなく、普通に入りたいなと思ってます」と話していた大谷だが、あの三振を喫したスライダーに何を感じたか。

2人は21日(日本時間22日)、三たびシアトルで顔を合わせる。

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